夕張市がJR北海道に「鉄道廃止」を提案した理由:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)
JR北海道が今秋に向けて「鉄道維持困難路線」を選定する中、夕張市が先手を打った。市内唯一の鉄道路線「石勝線夕張支線」の廃止提案だ。鉄道維持を唱える人々は「鉄道がない地域は衰退する」「バス転換しても容易に廃止される」という。夕張市の選択はその「常識」を疑うきっかけになる。
こうして地元の輸送需要減少とは関係なく、新夕張〜夕張間は残った。乗客は存在するとはいえ、わずかだ。つまり、夕張市にとって、鉄道路線はとっくに役目を終えていた。道路事情は改善され、札幌と夕張市を直結する道路は1954年に北海道道6号線として整備が始まった。1965年に夕張トンネルが開通し、1994年には道路再編成で道道3号線となり、2007年に新夕張トンネルに付け替えられた。一方、鉄道ルートは南に大きく迂回するルートのままだ。鉄道は特急利用で約2時間、各駅停車で約2時間半、札幌〜夕張間は路線バスで約1時間40分となっている。
夕張市は2019年度までに市内に拠点複合施設を作り、これを中心としたバス路線網を整備したいと考えている。JR北海道に対し、この交通体系への協力を引き替えに鉄道路線廃止に同意すると伝えた。夕張市にとって石勝線の新夕張〜夕張間は元々重要ではない。ならば、JR北海道から廃止宣告という屈辱を受ける前に、進んで鉄道線路を差し出して、市内の交通体系整備に対する好条件を引き出そうと考えた。この判断は異例ではあっても、客観的に見て意外ではない。どうみても夕張市優位の取引だ。
そもそも夕張市を走る石勝線支線が異例の存在だった。夕張市にとって、いや、わが国にとって役目を終えた路線である。国鉄時代からの廃止論議からすり抜け、JR化後も統計的都合で残っていた。従って、沿線自治体が廃止反対運動を盛り上げたという話も聞かない。むしろ、地元の人々も「あの線路はナゼ残ってるの」と思っているかもしれない。
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