連載
ホンダNSX 技術者の本気と経営の空回り:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/6 ページ)
ホンダが高級スポーツカー「NSX」の国内受注を約10年ぶりに始めた。新型の細部に目をやると同社技術者の本気度合いが伝わってくる。その一方で、販売の無策ぶりが気になるところだ。
そしてもう1つの役割だ。筆者はこれに最も感動した。この鋳造材はそのままサスペンションマウントになっており、フロントのダブルウィッシュボーンアームは上下とも、フレームの一部であるこの鋳造材に直接マウントされる。これはもうコロンブスの卵と言って良い。この構造を考え出したエンジニアに会ってみたい。
つまり、短いノーズでの衝撃吸収とサスペンションの高剛性で正確な位置決めを一発で解決した素晴らしいアイデアだ。リヤはキャビンから伸びるフレームが左右1本ずつの計2本だが、アッパー側については同様の構造が採られている。ロワー側は巨大なアルミ製中空サブフレームが車両の下面に取り付けられる。またリヤのダンパーマウントはルーフから下りてくる押し出し成形アルミ材で組まれたトラス構造によって支えられる。
見事としか言いようのないシャシー設計だ。高価な素材と工法をふんだんに使った贅沢なシャシーでもある。他のメーカーのエンジニアにしてみたら羨ましい限りだろう。そして恐らく日本のホンダのエンジニアにとっても……。NSXは開発も生産も米国拠点で行われている。いたずらにナショナリズムを振りかざすつもりはないが、それでも日本人としては一抹の寂しさを覚える。
関連記事
- ついに「10速オートマ」の時代が始まる
オートマ車の変革スピードが加速している。以前は4段ギア程度がわりと一般的だったが、今では5段、6段も珍しくない。ついにはホンダが10段のトルコンステップATを準備中なのだ。いったい何が起きているのか。 - 一周して最先端、オートマにはないMT車の“超”可能性
クルマの変速機においてマニュアルトランスミッションは少数派である。フェラーリやポルシェといったクルマでさえATが主流で、MTは風前の灯火かと思われていた。ところが……。 - クルマは本当に高くなったのか?
最近のクルマは高いという声をよく耳にする。確かに価格だけを見るとその通りだと思う一方で、その背景には複雑な事情があることもぜひ主張しておきたい。 - 「S660」はホンダの問題を解決できない
ホンダがグローバル戦略の遂行に苦心している。特に欧州、アジアではシェアが低く厳しい状況だ。突出したブランド力を持つ同社がなぜ伸び悩んでいるのだろうか……。 - 世界一の「安全」を目指すボルボの戦略
世界で初めてクルマに3点式シートベルトを導入したのがボルボだ。それから55年余り、同社の「安全」に対する徹底ぶりは群を抜いているのだという。 - 吉田茂の愛車も登場! 名車の祭典「AUTOMOBILE COUNCIL 2016」開幕(写真34枚)
名車の祭典「AUTOMOBILE COUNCIL 2016」の様子を写真でお伝えする。 - 「週刊モータージャーナル」バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.