国産初のジェット機MRJ 実はあまり収益に期待できない理由:加谷珪一の“いま”が分かるビジネス塾(2/4 ページ)
初の国産ジェット旅客機であるMRJの開発に黄色信号が灯っている。三菱重工業は既にMRJの開発に4000億円近い費用を投入しているとも言われるが、プロジェクトとして利益を上げることはかなり難しくなっている。MRJには三菱の顔としての役割があるものの、全社的な収益にはほとんど貢献しない可能性が高いのだ。
航空機製造のビジネスはもうからない?
三菱重工業は、MRJの黒字化には10年かかるとの見通しを示している。しかし、エンブラエル社との競合になり、受注目標が達成できないという状況になった場合には、収益化への道はさらに険しくなる。三菱重工業では、MRJの採算性について詳細を明らかにしていないが、そもそもこの事業はどの程度の利益が見込めるものなのだろうか。
航空機は複雑なシステムであり、MRJの部品点数は100万点を超える。自動車の部品点数が数万点であることを考えると、規模の大きさがお分かりいただけるだろう。
だが完成機メーカーが部品の全てを管理しているわけではない。現代の航空機産業は、メガサプライヤーと呼ばれる大手の部品メーカーが航空機の各ユニットを半完成品の状態で完成機メーカーに納入するというやり方が主流となっている。完成機メーカーは最終組み立てのみを自社工場で実施するケースが多い。
完成機メーカーは、メガサプライヤーが提供するユニットを選択するだけになるので、独自の部品を使用する割合は低くなる。どの企業が開発しても航空機の中身はほとんど同じであり、乱暴に言ってしまうと、完成機メーカーのビジネスモデルはPCメーカーに近い構造となりつつあるのが現実なのだ。
PCの場合、最終製品を作るメーカーが得られる製品利益は10%以下であることがほとんどである。航空機も同様に、量産機の組み立てで得られる直接的な利益はそれほど多くないというのが常識になっている。
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