メルシャンがフランス老舗ワイナリーに出資する理由(1/2 ページ)
国内ワインメーカーのメルシャンがフランスの老舗ワイナリー、ドメーヌ・カズに出資し、約10%の株主となった。両社は10年前から販売パートナーとして協業してきたが、なぜメルシャンは出資に踏み切ったのだろうか……?
ワインメーカー大手のメルシャンは11月7日、老舗ワイナリーの仏ドメーヌ・カズに出資したと発表した。2016年9月に株式278株(新規発行株式)の取得手続きを完了しており、既に約10%の株主となっている。
ドメーヌ・カズは、フランスの大手ワイングループであるアドヴィニ傘下の1社で、スペインとの国境沿い、南仏のワイン産地・ルーシヨンに拠点を構える。同社製品の特徴はフランス最大級のビオディナミ農法を実践したオーガニックワインであることだ。
メルシャンは2006年3月からドメーヌ・カズの商品を日本で代理販売している。今回の出資によって「(メルシャンから人材を送り込むなど)ドメーヌ・カズのマネジメントに入っていくわけではない」とメルシャンの横山清社長は話すが、なぜこのタイミングで出資したのだろうか。
オーガニックワインの急成長
それには大きく2つの理由がある。「日本でのオーガニックワイン市場拡大」と「商品構成の多様化」だ。
今、世界のオーガニックワイン市場は急成長を遂げている。2004年から2013年にかけて全世界のオーガニック栽培のブドウ畑は3.5倍に増えており、特にフランス(2008〜2010年で平均128%成長)やイタリア(同119%)といった主要ワイン産地で伸長が著しい。日本貿易振興機構(ジェトロ)の調べでは、フランス国内のワイン市場全体の8〜10%をオーガニックワインが占めるという数字も出ているほどだ。
一方、日本でも消費者の健康志向や自然志向、食の安心・安全に対するこだわりなどを背景にオーガニックワインの需要が高まっている。市場調査会社のインテージによれば、日本のオーガニック・有機ワインの販売金額は既に30億円を大きく超えており、2015年には対2012年比で122%となった。「この市場成長は今後も続く。日本でオーガニックワインの認知度をもっと高めるためにアピールしたい」と横山社長は意気込む。
そのために必要なのがドメーヌ・カズの商品ブランドなのだ。実はオーガニックワインを生産できる地域というのは世界広しと言えども限られていて、特に日本では病害虫の制御などが難しく、完全に無農薬でブドウ栽培するには厳しい環境だという。「それでも消費者はオーガニックワインを求めている。だからこそ海外ワイナリーとの強いパートナーシップが不可欠」だと横山社長は強調する。
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