巨艦メーカーの猛攻 アイホンが生き残る道は:消費トレンドから見る企業戦略の読み解き方(2/3 ページ)
名古屋市に本社を構えるインターホン専門メーカーのアイホン。あのグローバル企業との商標争いで同社を知った人も多いだろうが、インターホン・ドアホン業界で国内トップシェアを競う会社なのだ。
生き残り戦略
先述したように、国内のインターホンの市場規模は約900億円で、用途別には、住宅向けが89%、そのうちテレビ付インターホンが79%、一般用ドアホンが10%、病院・施設等の業務用が11%となっている(下図)。
2016年度上期は新設住宅着工件数が増加して、主力であるテレビ付インターホン市場は2015年に引き続き増加傾向で推移している。当面は首都圏を中心に大都市圏における集合住宅の増加と、防犯意識の高まりによって、緩やかな市場成長が期待できそうだ。
競合は、総合エレクトロニクスメーカーのパナソニックだ。アイホンと2社で9割以上のシェアを持つと推定される。アイホンの2016年3月期の売り上げは427億円(下図)だが、ここ1〜2年で両社の競争が激化、特に戸建新築市場ではパナソニックが優位に立っている。
アイホンの2015年度の売り上げ構成は国内が74%で、そのうち戸建住宅市場が12%、集合住宅市場が40%(図表3)。戸建住宅では同期間に販売台数は増加したものの、価格競争により売上高は対前年96%と苦戦している。一方、集合住宅市場では同103%とし、住宅市場全体では101.4%と、何とか増収を果たした。
国内集合住宅について、新築では大手ハウスメーカーへの密着営業により、小規模マンションやアパート向けシステム販売が好調。リニューアルでは、既設配線が利用でき、かつ施工性を高めた新しい集合住宅システムの販売が増加。ハウスメーカーや設計事務所、工務店の現場ニーズをくみ取ったシステム型の商品と提案営業による成果と言える。
かたや、同社の戸建市場での苦戦は、「価格.com」サイトを見ると、その一端を垣間見ることができる。ライバルのパナソニックの圧倒的な品揃えと価格帯の広さ、加えて低価格化である。そこではアイホンの存在感は小さい。住宅のニーズが新築からリニューアルにシフトし、個人主導でインターホンが設置されるようになると、アイホンの強みだったハウスメーカーや設計事務所向けの営業は生きず、消費者対応が求められる。家電流通における消耗戦を少しでも回避するには、ネット対応と最終消費者向けのブランド再構築が必要だろう。
そのほか、成長市場として期待されるケア市場(病院、高齢者施設や高齢者住宅)でも、着工件数の減少、高齢者施設での競争の激化により売り上げは減少している。成長をけん引しているのは、海外市場、特に北米での伸長である。1970年の米国進出を皮切りに、現在は約70か国以上で販売され、海外比率が約3割までに拡大している。中でも北米市場は115%と2桁成長である。
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