イトーヨーカ堂の反撃は始まっている:新連載・小売・流通アナリストの視点(2/4 ページ)
大手GMS(総合スーパー)が軒並み業績不振だ。ただし、各社の置かれた状況は一律ではなく、起死回生の一手となるカードを持つ企業がいるのだ。それはイトーヨーカ堂である。
レールサイド型の優位性
こうした経緯から、日本国内の商業立地はロードサイド立地とレールサイド立地に分化した。大まかに言えば、イオンとユニーはロードサイド型、イトーヨーカドーはレールサイド型である。そしてイトーヨーカドーがレールサイド型であることこそが他社とは異なる中長期的な優位性を秘めている。その理由は(1)人口動態(2)高齢化(3)競合環境の3点から説明できる。
まずは人口動態だ。ご存じの通り、首都圏の人口はまだ増加傾向を維持しており、将来的に減少に転じるものの、その減少率は他の地域に比べれば緩やかである。中でもその鉄道沿線に人口は集中する傾向にあり、これまで以上に首都圏駅前の商業立地価値は高まると見ていいであろう。
次に高齢化である。昨今の高齢者ドライバーによる事故の社会問題化がますます深刻になれば、今後クルマに乗れなくなる高齢者が増え、クルマで買物に行けない人も増えてくる。子どもによる買い物扶助の動きもあろうが、公共交通に依存する人の割合はさらに上昇する。現在でも、公共交通の利便性が極めて高い首都圏においては、代替手段の乏しい地方エリアより免許返納率が高いという統計的事実もある。その結果、公共交通に依存する高齢者が今以上に増加し、駅前の商業立地価値はさらに高まるだろう。
最後の競合環境が最も重要なポイントである。首都圏の優良な駅前立地は数が限られている上に、その周辺部にはほとんど空き地はない。この立地に新たな商業施設を作るとすれば、事実上再開発という手段しかないのである。ここまで見ればイトーヨーカドーの駅前既存店の価値がいかなるものかは、考えるまでもないだろう。この点でイトーヨーカ堂と比肩し得る企業は鉄道各社の商業施設くらいしかなく、流通企業では断トツの優位性を持っていることは間違いない。
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