XPRIZE最終年、各チームが選ぶロケットは?:宇宙ビジネスの新潮流(2/3 ページ)
日本からもHAKUTOが出場する賞金総額3000万ドルの月面無人探査レース「Google Lunar XPRIZE」に関して重大な発表がなされ、ファイナリストが16チームから5チームへと絞られた。各チームの動向をお伝えしたい。
小型ロケットで月面輸送は可能か
他方で、小型ロケットと契約したチームもある。米Moon Expressはシリコンバレー発のベンチャー企業であり、今回の月面無人探査にあたり、米国で初めて商業月面着陸に関する許認可を得た企業だ。著名投資家のピーター・ティール氏が率いるFounders Fundをはじめ、既に50億円以上を調達しており、XPRIZEミッションのための資金はすべて集まったと発表している。
同社が今回打ち上げ契約を行ったのが小型ロケットベンチャーの米Rocket Labだ。本コラムでも何度か取り上げたが、Rocket Labは今後需要が伸びる小型衛星打ち上げのため、150キログラムの衛星を高度400〜500キロメートルまで打ち上げるための小型ロケット「Electron」を開発中だ。その打ち上げ能力が、今回のXPRIZEのミッション達成のために十分なのか否か注目が集まる。
最後に、Synergy MoonはこれまでXPRIZEに参加してきた米Omega Envoy やIndependence-Xなど6チームが1つとなり、15カ国のメンバーから構成される国際チームだ。未だに謎が多いチームではあるが、打ち上げロケットに関しては低価格のモジュラー型ロケットを開発する米Interorbital Systemが担当するという。
XPRIZEを離脱し、独自に月面を目指すチーム
一方で、2年前に発表された中間賞を日本のHAKUTOとともに受賞して、関係者からも有力チームと評されていた米Astroboticsや独Part-Time Scientistsは今回レースから離脱するという結果になった。
Astroboticsは月輸送システムや資源開発ビジネスに関して具体的なめどがついたため、XPRIZEを推進力として活用する必要がなくなったと発表している。元々、自社のビジネスを「月面までのDHLやFedExのようなものだ」と語っていたが、その後、DHLとも正式なパートナーシップを結んでおり、2019年に月面に向けた独自の打ち上げを計画している。
また、自動車メーカーのAudiがスポンサーをしていることで有名なPart-Time Scientistsも2018年中旬に独自に打ち上げることを計画しており、チームリーダーのロバート・ベーメ氏によると「それを早めることはリスクを伴う」との判断から今回離脱に至ったと発表している。
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