XPRIZE最終年、各チームが選ぶロケットは?:宇宙ビジネスの新潮流(3/3 ページ)
日本からもHAKUTOが出場する賞金総額3000万ドルの月面無人探査レース「Google Lunar XPRIZE」に関して重大な発表がなされ、ファイナリストが16チームから5チームへと絞られた。各チームの動向をお伝えしたい。
商業宇宙資源開発が加速
XPRIZEに参戦してきたチームの中には、HAKUTOを運営するベンチャー企業ispaceや先述のMoon Express、Astroboticsなど将来的な商業宇宙資源開発を目指す企業が存在する。宇宙空間にはプラチナのようなレアアース、アルミニウムなどの金属類、そして月面などに水があることが、これまでの調査で分かっている。
商業宇宙資源開発に関しては、2015年に当時のオバマ大統領が世界で初めて国内法という形で、米国市民・企業による商業宇宙資源開発を認めた。Moon Expressのボブ・リチャードCEOも働きかけを行ったことを公言しており、また前後して1200万ドルの資金調達にも成功している。
さらに呼応する形で、欧州のルクセンブルクが商業宇宙資源開発への取り組みを進めている。既に同国では、米国同様に国内法案が作られており、今年のいずれかのタイミングでは成立することが見込まれている。米国に続く2件目の事例になる。そして、200億円規模の資金準備もしており、動きが加速している。
国連でも宇宙資源開発を議論
このようにここ1〜2年は、主要国の国内法制定、および多国間連携といったボトムアップ的に世論形成が行われてきた商業宇宙資源開発だが、国際的な場での議論も進む。2016年には国際宇宙法学会で宇宙資源開発が議題に上がっており、国連の宇宙平和利用推進委員会(通称:COPOUS)が法律小委員会第56会期(2017年)の議題として宇宙資源開発を採択した。
最終年を迎えたXPRIZE、民間企業による月面無人探査が成功するかに注目が集まるとともに、XPRIZE後の商業宇宙資源開発の動きにも注目だ。
著者プロフィール
石田 真康(MASAYASU ISHIDA)
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル
ハイテク業界、自動車業界、宇宙業界などを中心に、10年超のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙民生利用部会および宇宙産業振興小委員会 委員。民間宇宙ビジネスカンファレンスを主催する一般社団法人SPACETIDE代表理事。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。主要メディアへの執筆のほか、講演・セミナー多数。
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