JRダイヤ改正で市販時刻表もダイワリ改正:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)
JRグループは3月4日、例年より少し早くダイヤ改正を実施した。新幹線開業など大きなトピックはなかったけれど、スピードアップや駅の廃止、路線延長など各地で動きがあった。その変化を正確に示す書物がある。市販の時刻表だ。
最小限の変更で済ませたJR時刻表
JR時刻表の変化は小さい。読者の違和感を最小限にとどめようという配慮かもしれない。JR北海道の特急をまとめたページは、80〜81ページの上段に札幌〜網走・稚内を見開きで掲載。下段は札幌〜帯広〜釧路と季節列車の札幌〜富良野で、80ページが下り、81ページが上りだ。従来は80ページに札幌〜旭川・札幌〜稚内、81ページに札幌〜帯広〜釧路と札幌〜網走という区割りができていた。
この変化はJTB時刻表と同じ意図だ。札幌〜網走・札幌〜稚内の直通が減便となるため、旭川の乗り継ぎを考慮している。急ぐ人は直通か旭川ですぐ乗り継ぐ。しかし、旅行者なら旭川で滞在し、旭山動物園を見物したいかもしれない。
JR九州の特急「かわせみやませみ」「いさぷろう」「しんぺい」の欄の追加は、「はやとの風」の欄に挿入。「はやとの風」は下の「指宿のたまて箱」の欄に移行。追い出された「指宿のたまて箱」は次のページへ移り、「きりしま」の空行を圧縮して挿入した。何だか面倒なことをしているけれど、運行区間を北から南の順で並べている。
次の変化は東海交通事業城北線だ。平日に1往復を増発し、休日に運休する列車が増えた。帳尻が合いそうな気がするけれど、そうはいかない。平日休日を一緒に表記した場合、1行を使って“休日運休”と表記する。運休する列車が増えるほど、必要な行数は増えていく。このままでは行数が足りない。そこで平日と土休日を分離した。
この影響で樽見鉄道は飯田線本長篠〜豊橋間の見開きの下に移動。そのために飯田線は“終着”と“次の掲載ページの欄を削って上下を圧縮している。明知鉄道も掲載位置が移動している。これでページ数の増減はなし。
270ページからの湖西線・北陸本線・IRいしかわ鉄道・あいの風とやま鉄道は下り・上りとも1ページずつ減っている。JTB時刻表の理由とは違い、JR時刻表の場合はもともと隙間が多かったため、空行を削減して圧縮したように見える。減ったページは、中国地方で使っている。理由は可部線の延伸、呉線と芸備線三次〜広島間の増発だ。
芸備線三次〜広島間は錦川鉄道と併載だった1ページから単独で見開きに大幅増加。可部線も岩徳線を押し出し、単独で見開きの掲載となった。錦川鉄道と岩徳線は呉線の下へ移動し、前号までここにあった境線は木次線・芸備線新見〜三次間の下に移動している。三江線と木次線は掲載ページが交換された。
このほか、両毛線のレイアウトが変更された。高崎〜小出間の表記が新前橋〜小出間に短縮され、路線名の表記が左側縦書きから上段横書きになった。JTB版では大きく変化したJR北海道関連も掲載順に変更なし。もっとも、以前から長万部〜小樽間は分離して掲載されており、変更する必要がなかったとも言える。駅の数が減った分だけ、路線名表記の枠が広くなった程度だ。
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