AIが普及しても営業職はなくならない?:“いま”が分かるビジネス塾(2/4 ページ)
近い将来、社会にAI(人工知能)が普及し、多くの仕事が機械に取って代わられるというのは、一定の共通認識となりつつある。だが具体的にどの仕事がAIに代替されやすいのかという部分については、人によって考え方が異なっているようだ。
なくなる営業となくならない営業
AIが既存の仕事をどのように代替するのかというテーマについては、今のところ英オックスフォード大学が発表したレポートが有名であり、多くの論考がこの研究結果をベースにしている。「AIによって仕事の半分が消滅する」といった話も大抵このレポートを参考にしたものである。
それによると、営業系はむしろAIに代替される可能性が高い職種に分類されている。もっとも営業系の職種といっても内容はさまざまだ。同大学では、ルート営業や電話営業などは高い確率で代替される一方、金融営業などは代替されにくいと結論付けている。
つまり、付加価値の低い営業は簡単にAIに取って代わられ、高付加価値の営業は代替されにくいということになるのだが、そうなってくると、営業職だから安泰というわけにはいかなくなる。さらに言えば、このレポートにはいくつかの前提条件が設定されており、これについても注意が必要だ。
オックスフォード大学の研究は、職種ごとに、操作性、創造性、社会的相互作用などの項目で評価を行い、人間が行う作業との置き換え可能性を数値化する手法が用いられた。この評価方法では、操作性がロボットに向いていれば置き換えが容易と判断されるのだが、実はコスト面は評価の対象外となっている。ロボットに向く作業であっても、コストが高ければ人間の仕事はなくならない可能性がある。
また、この研究では創造性を必要する分野は人間に向いているということが前提になっており、関連する職種の置き換え可能性は低く計算されるという特徴がある。
従って、現実社会においてどの仕事がAIに置き換わりやすいのかを考える場合には、コスト面と創造性に対するAIの能力などについて総合的に判断しなければならない。
関連記事
- 通販事業者は“物流危機”にどう対応する?
宅配便最大手のヤマト運輸が、荷物の取扱量抑制の検討を開始した。アマゾンを中心にネット通販の荷物が急増したことで、現場が悲鳴を上げている。一方、AI(人工知能)を使った配送の最適化やシェアリング・エコノミーによる業務の一般開放など、イノベーションの波も押し寄せており、数年後には配送をめぐる環境が激変している可能性が高い。 - 東芝は今後も迷走し続けるのか
東芝は分社化するメモリ事業の株式売却で、1兆円以上の資金を調達する方向で調整している。しかし、債務超過を回避して財務問題に一定のめどを付けたとしても、同社を取り巻く環境が大きく改善するわけではない。同社には、明確な戦略というものが存在せず、その状況は今も変わっていないからだ。 - 「渋滞予測」「異常検知」 2020年、テクノロジーは東京の安全をどう守るのか
近い将来、テクノロジーの進化によって、あらゆる“渋滞”をなくすことができるかもしれない――。いま、人(集団)の行動を分析して、渋滞や危険を予測する研究が進んでいる。 - 活躍できる職場をAIがレコメンド 人事業務の最適化で「輝ける人を増やす」
採用活動、人事配置などの人事業務は属人的な判断に頼る部分が多く、まだまだ合理化されていない領域の1つだ。そのような中、人事業務にテクノロジーを掛け合わせた「HRテック」(Human Resource Technology)と呼ばれる取り組みが本格化しつつある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.