AIが普及しても営業職はなくならない?:“いま”が分かるビジネス塾(3/4 ページ)
近い将来、社会にAI(人工知能)が普及し、多くの仕事が機械に取って代わられるというのは、一定の共通認識となりつつある。だが具体的にどの仕事がAIに代替されやすいのかという部分については、人によって考え方が異なっているようだ。
AI化されるかどうかはコスト面の影響が大きい
もっとも重要なのはやはりコストの問題だろう。低付加価値な仕事はAIによる代替可能性が高いといっても、コストが割高では企業は導入を決断しない。賃金が極めて安い職種は、逆にAIに代替される可能性が低くなるということも頭に入れておく必要がある。この話は当然、逆も成立する。
付加価値が高い仕事であっても、賃金が高く、企業から見てコスト負担が大きいと思われる仕事はAIに取って代わられる可能性が高くなるのだ。具体的には、会計士、パイロット、弁護士、医師といった職種だ。
技術的にはパイロットの仕事はかなりの部分がAIに代替させることが可能となっている。パイロットが操縦しない航空機に顧客が乗りたがるのかというメンタルな部分や政府の規制の問題は別にして、航空会社がコスト負担が大きいと感じれば、パイロットの仕事は容易にAIに取って代られる。その点では、弁護士も同じである。
先ほどの転職コンサルタント向けのアンケートでは、AIに代替されにくい職業の4位として弁護士が入っていた。しかし、弁護士の仕事については興味深い話がある。大手弁護士事務所に所属するある弁護士は、弁護士という仕事が完全に消滅することはないと前置きしながらも、過払い請求や交通事故対応など、特定分野における弁護士の仕事は容易にAIに代替される可能性があると論じている。
既に米国の大手弁護士事務所は、IBMが開発した人工知能Watson(ワトソン)に大量の文書を読み込ませ、弁護士の業務を人工知能が支援するシステムを導入している。文書を理解したり、事実関係を整理するという単純作業をAIが行い、弁護士本人はより重要な仕事に集中するという仕組みだ。
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