日本が“New Space”で世界に勝つための条件:宇宙ビジネスの新潮流(2/3 ページ)
民間宇宙ビジネスイノベーション“New Space”が世界的な潮流となりつつある。この分野で日本の勝機はあるのだろうか? 有識者たちが議論した。
パネル4「日本の新宇宙産業の挑戦と機会」
最後のパネルでは、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の高田修三事務局長、JAXAの山浦雄一理事、三菱電機の小山浩役員技監、キヤノン電子の酒匂信匡所長、慶應義塾大学大学院の白坂成功准教授と、宇宙ビジネスにかかわる産学官のステークホルダーが登壇し、日本の可能性を議論した。モデレータは筆者が務めた。
登壇者が共有したのは時代感だ。「この社会はリニアに思い浮かべるという延長線上にはない。宇宙も非宇宙もない、オールドもニューもない、一体で取り組んでいかないといけない大きなトレンドに直面している」(高田氏)、「ここ2年、この変化の大きさを実感している。シリコンバレーにも行った。UAEにも行った。重要なことは変えることだ。個人のマインドを変えないといけない。社会を変えて、所属する組織の論理を変える必要があると思った」(山浦氏)などと、変革というキーワードが繰り返し強調された。
また、小型衛星のモノ作りについては、「大量の衛星を作るためにどう製造しなければいけないかを考えている。大型衛星が一品モノのお惣菜パンだとすると、我々が作るのはラインで流す食パンだ」(酒匂氏)、「製造、試験、運用、利用を俯瞰して設計へと反映するスパイラルアップが重要だ。OneWebは世界初の衛星自動製造工場で1週間に15機作ろうとしている。その設計手法が大型衛星に活用されると圧倒的な差がついてしまう」「何百機とか何千機の大量生産をどうするかを考える機会がなかった。技術的には今までの経験が土台になるが、モノ作りは民生量産に近い文化をもった別組織にならないといけない」(小山氏)など、警鐘を鳴らす声が相次いだ。
ベンチャー企業に対しては、「(いろいろ回って)学んだことはエコシステム。人材が根幹、さらに大学・研究機関、出資者、交流の場など。真のベンチャーはイノベーション+社会貢献であり、こういうところが生きるために何をするべきか。宇宙機関はエコシステムの一部である」(山浦氏)、「新しいアイデアを呼び掛けて、起こしていきたい。(民間スポンサー企業を募集して)良いアイデアを資金面・技術面で応援できるようなビジネスアイデアコンテストにも挑戦したい」(高田氏)、「大手企業とベンチャー企業でうまい連携ができると思っている」(小山氏)など高い期待のコメントが聞こえた。
そして、新しい市場を切り開くための要素として「シリコンバレーでは失敗をする人ほど尊重する文化だ」(山浦氏)、「2階建て経営論がある。1階のビジネスが安定している間に、2階で失敗してもよいというトライアルをすることが大切」(白坂氏)、「AirbusやThalesなどはNew Spaceの競争環境で身に付いたものを自社にフィードバックしようとしている。そういう視点も含めてトライアルする場としてとらえている」(小山氏)など、“失敗やトライアル”の必要性が強く語られた。
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