AIが働かないと私たちは貧しくなる:“いま”が分かるビジネス塾(2/4 ページ)
人口減少による著しい人手不足が今後も加速していく可能性が高い日本。このままでは、あらゆる業界で過労問題が発生するだろう。「AIが仕事を奪う」という心配をしている場合ではない。AIに働いてもらわなければ経済(社会)が回らなくなるという事態になりかねないのだ。
AIを導入しないと貧しくなる
現在、日本では約100万人の外国人労働者が働いている。2040年までに中核労働人口(35〜59歳)は1100万人減少する見込みなので、同じ労働者数を維持しようと思った場合には、今の10倍の外国人労働者を受け入れなければならない。ちなみに、外国人労働者の受け入れに極めて積極的なドイツや英国でも外国人労働者の数は300万人程度である(国籍を取得した移民は含まない)。
外国人に対する許容度が低い日本社会の現状を考えると、多くの外国人を受け入れることは現実的に難しいだろう。そうなってくると、生産性を向上させるにはAIやロボットなどを投入し、より少ない人数で多くの業務を処理する必要が出てくる。
日本の場合には、AIの普及が特定の仕事を奪うという側面だけでなく、積極的にAIを導入しないと製品やサービスの供給に重大な支障が生じるという別の側面がある。これは人口減少が著しい日本特有の問題といってよいだろう。
AIが従来の仕事を奪うのかどうかはコスト面の影響が大きいと言われているが、人手不足が著しく、業務の維持がままならないという状況の場合、多少コストが掛かってもAI・ロボットの導入が決断されることもある。日本における社会のAI化について議論する際には、こうした視点を持つことが重要である。
人手不足が深刻なサービス業
具体的にどのような業種で人手不足が深刻になっているのだろうか。日銀が四半期ごとに行っている全国企業短期経済観測調査(短観)を見ると、2016年12月末現在、国内の大企業において人手不足が最も深刻なのは、建設、宿泊・飲食サービス、小売、情報サービス、運輸といった業種である。
全般を通じて見ると、非製造業において人手不足が顕著になっていることが分かる。人手不足の上位に並ぶ業種の多くは非製造業であり、製造業はどちらかという下位に並んでいる。日本は製造業の国というイメージが強いが、圧倒的にサービス業の規模が大きい。現在、国内には約6000万人の労働者が存在するが、このうち製造業に従事しているのはわずか1000万人である。
労働者の大半を占めるサービス業において人手不足が深刻であるということは、人手不足によって経済に供給制限が発生する可能性が高いということを意味している。
基本的に人手が足りていない業種の場合、AI導入のインセンティブは高まることになるが、当然のことながら人手不足だけでAI導入が決まるわけではない。AI導入を決断する際のポイントになるのは、業務の代替可能性とコストである。業務の代替可能性については英オックスフォード大学が行った調査研究が有名だが、経済産業省がこの結果をもとに日本におけるAI化について試算を行っている。
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