AIが働かないと私たちは貧しくなる:“いま”が分かるビジネス塾(3/4 ページ)
人口減少による著しい人手不足が今後も加速していく可能性が高い日本。このままでは、あらゆる業界で過労問題が発生するだろう。「AIが仕事を奪う」という心配をしている場合ではない。AIに働いてもらわなければ経済(社会)が回らなくなるという事態になりかねないのだ。
サービス業はAI化する?
この試算は、厳密には社会のAI化について、何もしなかったケースと積極的にAI化を進めたケースに分けてその影響を調べたものだが、業種ごとのAIによる代替可能性についてもおおよその情報を得ることができる。
それによると、従事者数の減少がもっとも多いのは製造業となっており、2015年から2030年の間に製造業全体のうち約3割の仕事がAIによって代替されるとしている。工場の無人化・省力化が進むことで、直接製造に携わる労働者の減少が著しい。調達部門については、サプライチェーンのIT化が進むことで、調達管理や出荷、発送に携わる労働者の数が減少するいう。
非製造業では、卸、小売、金融など役務提供型サービス部門での代替が進むと試算している。この分野には約2000万人の労働者が従事しているが15%近くの仕事が消滅する。このほか、情報サービス部門が約3%、宿泊・飲食などが12%、運送・電気などのインフラ系が15%の減少となっている。
絶対数、割合ともに卸・小売といった業種が、割合のみに限定すれば宿泊・飲食、インフラなどへの影響が大きいことが分かる。一方で介護・医療などの分野については、従事する労働者の数はむしろ増加すると試算されている。
この試算で得られたAIへの代替可能性に関する情報と、日銀短観から得られる人手不足の情報を掛け合わせると、最もAI化のニーズが高い業種が見えてくる。
先ほど解説したように人手不足感が最も強い業種は、建設、宿泊、飲食、小売、情報サービス、運輸であった。一方、AIによる業務の代替が容易な業種は、小売、情報サービス、宿泊、飲食、運送。基本的に両方の業種は大きく重なっていることが分かる。
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