なぜセブンは海外のコンビニを買うのか:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
セブン-イレブンがこれまで聖域としてきたFC加盟店のロイヤリティ引き下げに踏み切った。同じタイミングで過去最大規模となる海外のコンビニのM&A(合併・買収)実施についても明らかにしている。飽和市場で苦しくなると言われながらも、何とか成長を維持してきたコンビニ業界だが、一連の決定は成長神話もいよいよ限界に達しつつあることを如実に表している。
人件費の高騰で経営が苦しい加盟店
セブンが、年間100億円以上の減収を引き受けてでも加盟店に利益を提供する理由は大きく分けて2つある。一つは人手不足による人件費の高騰によって加盟店の経営が苦しくなっていること。もう一つは、コンビニの市場拡大が頭打ちで、競合各社によるシェア争いの激化が予想されていることである。
セブンの場合、各店舗の平均的な年間売上高は2億5000万円程度である。ロイヤリティが高い契約の場合、原価率を70%と仮定すると、店舗側に残る利益は2200万円程度にしかならない。アルバイト店員の人件費は1000万円を超える可能性が高く、これに加えて各種経費も必要となる。
平均的なレベルの売上高が維持できていれば何とか経営できるが、立地の問題などから売り上げが思ったほど伸びていない場合、加盟店オーナーの生活費を捻出するだけでも一苦労だ。
このところ人手不足が深刻な状況となっており、経費の大部分を占める人件費の高騰は、加盟店の経営を苦しめている。本部の利益を還元して加盟店の経営を支援しないと、経営難になる店舗が出てこないとも限らない。
これに加えて、コンビニ市場がそろそろ頭打ちになりつつあることも影響している。日本の小売市場全体は過去20年、多少の上下変動はあるものの、ほぼ横ばいという状況が続いてきた。そのような中、コンビニ業界だけが拡大を続けることができたのは、地元商店などから顧客を奪うことに成功していたからである。だがこうしたコンビニの拡大策もいよいよ限界に達しつつある。
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