サラリーマンの味方「切腹最中」は、なぜ1日に7000個も売れるのか:水曜インタビュー劇場(すみません公演)(4/5 ページ)
お詫びの手土産として、多くのサラリーマンが購入する「切腹最中(せっぷくもなか)」をご存じだろうか。1990年に発売したところ、当初は注目されていなかったが、いまでは多い日に7000個以上売れている。「切腹」という言葉が入っているのに、なぜヒット商品に成長したのか。
レシピは門外出まくり
土肥: 切腹最中の売り上げが伸びていくわけですが、とはいってもおいしくなければここまで広がるはずはないと思うんですよ。「このたびは申し訳ございませんでした。お詫びのしるしにコレを……」と言って渡しても、味がイマイチだと火に油を注ぐことになるかもしれません。「こんなモノを持ってきやがってーっ! コノヤロー!」と。
渡辺: 以前、あんこは2〜3回煮込んで、アクをしっかり取っていました。でも「もったいないなあ。ひょっとしたら、小豆の旨味を捨てているのでは?」と考え、いまは1回だけ煮込んでアクをあえて残しているんです。一般的な方法ではありませんが、食べた後にふわっと香るあんこの匂いを感じていただけるようになったのではないでしょうか。
個人的に、最中の皮が上あごにくっつくことが大嫌いなんですよね。くっつかないような「サクサクした皮をつくる」ために試行錯誤を重ねてきました。で、どうしたかというと、上質なもち米を使って、水分を少な目にして焦がしているんですよね。
また、砂糖は上白糖を使っていたのですが、いまは「鬼ザラ糖」。糖度が高いのですが、さっぱりとした甘さが特徴なんですよね。価格はちょっと高いのですが、「おいしい」と感じてもらうために、この砂糖を使っています。あと〜〜〜ペラペラペラ〜〜〜。
――このあとも、渡辺社長は切腹最中のレシピを語りまくる。
土肥: しゃ、社長。メディアの人間として、いろいろお話しいただけるのはうれしいのですが、あまりペラペラ話してしまうと、ライバルが味を真似してくるのではないでしょうか?
渡辺: いや、そんなことは全く気にしていません。
土肥: 気にしていない? どういうことですか?
渡辺: 菓子業界の人が参加するセミナーなどでも、レシピは何度も話してきました。「あんこのおいしい作り方を教えてください」という相談があれば、気にせずご紹介しています。
土肥: レシピはその……門外不出ではないと?
渡辺: 門外出まくりですね。なぜそんなことをしているのかというと、おいしくない店がたくさんあるから。消費者は、おいしいあんこが詰まっている和菓子を食べたいですよね。だから、当店の味を真似たいという人がいれば、お伝えするようにしています。
関連記事
- 売り場を減らしたのに、なぜ崎陽軒のシウマイはバカ売れしているのか
東京や新横浜で新幹線に乗ると、車内でビールを飲みながら「シウマイ」を食べているサラリーマンをよく目にする。崎陽軒の「シウマイ弁当」だ。駅弁市場は縮小しているのに、なぜシウマイ弁当は売れているのか。その理由を、同社の担当者に聞いたところ……。 - 生産中止! 大苦戦していたブラックサンダーが、なぜ“売れ続けて”いるのか
30円のブラックサンダーを食べたことがある人も多いはず。年間1億個以上も売れているヒット商品だが、発売当初は全く売れなかった。一度は生産中止に追い込まれたのに、なぜ“国民の駄菓子”にまで成長することができたのか。 - 殻を捨てた「ザク」が、20万個以上売れている秘密
バンダイが発売しているガシャポン「ザク」が売れている。機動戦士ガンダムシリーズに登場するザクの頭部を再現したものだが、最大の特徴はサイズ。カプセルよりも大きいこのアイテムはどのように開発したのか。担当者に聞いた。 - 眼鏡がいらなくなる? 世界初の「ピンホールコンタクトレンズ」にびっくり
近視や老眼をコンタクトレンズ1枚でカバーできる「ピンホールコンタクトレンズ」をご存じだろうか。現在、臨床研究を進めていて、2017年度中の商品化を目指しているという。どのような原理でできているかというと……。 - 「どうせ売れない」を覆した「もぎたて」大ヒットの理由
2016年に706万ケースを販売したアサヒビールの缶酎ハイ「もぎたて」。これまで、売れる酎ハイをなかなか生み出すことができなかった同社が、なぜ大ヒット商品を生み出せたのか。 - チョコボールが、いまも売れ続けている理由
チョコボールといえば「おもちゃのカンヅメ」。子どものころに「あれが欲しくて、何個も買った。でも当たったことがない」という人も多いのでは。おもちゃのカンヅメの中に何が入っているのか。どのくらいの確率で当たるのか。森永製菓の担当者に話を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.