コンビニが「焼き鳥」強化、何が起きようとしているのか:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
ファミリーマートが焼き鳥の本格的な販売に乗り出した。ローソンも2016年から焼き鳥を強化しているが、今後、コンビニ各社は総菜類の品ぞろえをさらに拡充していく可能性が高い。一方、国内でもじわじわと「UberEATS」や「楽びん」といったデリバリーサービスの普及が進んでいる。近い将来、デリバリーを軸に、コンビニなどの小売店と外食産業の垣根が消滅する可能性も出てきている。
近い将来、外食と小売の垣根は消滅する
こうしたデリバリーサービスはまだ発展途上であり、全国どこでも利用できるという状況ではない。だが、ITを駆使した新しいサービスの潜在力は大きいと筆者は考えている。社会の動きが速い米国では、すでに外食産業に異変が生じている。
米国ではこのところ、ランチを食べにレストランに入店する顧客数が減少しているという(全米レストラン協会調べ)。日本と異なり米国は人口が増加しており、消費市場そのものは順調に拡大している。そのような中で顧客が減少するということは、市場構造の変化を疑う必要がある。
背景にあるのはIT化よる業務効率の高まりと考えられる。個人が自分のペースで仕事を進められるようになり、ランチをゆっくり食べることはせず、早く仕事を終わらせた方がよいと考えるビジネスマンが増えた。対面での仕事も減ったことで、商談目的のランチも減少しているという。ITを使ったデリバリーサービスの進展すれば、さらに外食のニーズは低くなっていくだろう。
一連の市場の動きに対して、外食産業が取るべき道は2つしかない。1つは、食事という「場」を提供する付加価値の高い業態にシフトする方法。もう1つは、デリバリー市場の拡大を受け入れ、メニューや価格体系、コスト構造を変えるというやり方である。
米マクドナルドや米ウェンディーズといったファストフードやファミリーレストラン各社は、相次いで宅配メニューを拡充し、新しいニーズに対応しようと試みている。
米国におけるこうした動きは、日本にも確実に波及してくるだろう。吉野家が、デリバリーサイトの出前館と提携し、1部店舗で出前サービスを始めるなど、既に動き始めているところもある。
デリバリーをめぐって外食と小売が顧客を奪い合うことになると、店舗の立地に対する概念も大きく変わってくるだろう。売上高の多くをデリバリーが占めるようになれば、わざわざ高いコストを払って好立地の場所に出店する必要はなくなる。これから先、10年の間に、外食産業や小売店に関する基本的な価値観が全て塗り変わっていたとしても、筆者はまったく驚かない。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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