ウォーリーをさがすように、「顧客」を見つけることができるのか:営業部 AI課(4/4 ページ)
「自社製品を購入する人」を見つけてくれるサービスが、米国で広まりつつある。「LeadCrunch(リードクランチ)」という会社が提供する営業支援ツールだが、具体的にどのようなものなのか。導入企業の実績をみると……。
AIと企業の営業が切り離せなくなる日
企業なら一度は試してみたいと思うような興味深いAIビジネスツールだが、実はリードクランチには課題も指摘されている。
AIを駆使したデータ解析などと言うとかなりの金額が要求されるのではないかと思われがちだが、リードクランチの場合、精度が60〜70%のリストなら300ドルから利用可能だ。もっとも精度の高いデータを求めるなら、最低3000ドルの契約から始められる。ただこの金額設定があまりにも低いのではないかと指摘されているのである。低い料金設定だけでなく、資金調達もあまり進んでおらず、それこそが、同社がまだもうひと段階上に成長できない理由だとの声もある。
リードクランチも、価格設定が低く、ほかのIT系企業に比べて自分たちが得ている資金が低いことを自覚している。オリン・ハイドCEOは同社のブログに、「他の企業は十分すぎるほど資金調達しているために、私たちと違って、さらに学んで革新的であるべきだというプレッシャーを感じなくなっている。私たちは資本効率と、他よりも低いコストと短時間で問題を見直してライバル企業に打ち勝ちたいのです」と主張している。職人気質といえるその独自路線が今後吉と出るかどうかが注目される。
ただ、リードクランチに限らず、こうしたAIを使った営業ツールは今後も注目されることは間違いない。現在ではまだ米国が中心だが、今後、企業が成長を続けてローカリゼーションなどが増えてきたり、AI技術が広く使われるようになれば、一気に世界でも広がることだろう。
AIと企業の営業が切り離せなくなる日はそう遠くないかもしれない。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。
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