9階建ても登場 都心で多層階の家を仕掛けるパナホーム:その狙いは?(4/4 ページ)
3階以上の多層階住宅の住宅着工棟数が増えているのをご存じだろうか。特に土地の価格が高く、土地面積が狭い都市部での多層階化が進んでいる。その市場でトップシェアを誇るのがパナホームだ。
パナホームは、「上へ、上へ、ビューノ」を、マーケティングメッセージとして、多層階事業を展開。16年度実績では年間900棟、800億円を受注。17年度には年間1000棟、900億円、18年度には1100棟以上を目標とし、年間1000億円の売上高を目指す計画だ。
現在、東京、名古屋、大阪など全国11拠点でピューノプラザを展開。これらの拠点を通じて、多層階のコンサルティングサービスを提供している。
パナホーム 東京東支社の赤羽潤支社長は「台東区、千代田区、墨田区、中央区などの高層エリアでは4〜9階を主力にし、併用住宅や非住宅を提案。また、北区、文京区、豊島区、荒川区、江東区の中高層エリアでは3、4階建て住宅を主力に据え、住宅専用や賃貸住宅、併用住宅を展開する。そして、葛飾区、江戸川区、足立区、板橋区の中低層エリアでは、Vieuno3E を含む2、3階建て住宅を提案し、住宅専用や賃貸メインでの展開を行う。エリアに応じた商品提案によりシェア拡大を見込む」と強調する。
また、パナホーム 大阪支社の武田悟支社長は「大阪市内は、ほとんどの地域が建ぺい率が80%であり、容積率が200%以上となっている。また、東京都とは異なり、高度斜線規制がないため、3階建て住宅を建てやすい環境にある。特に環状線の内側は、容積率が300〜1000%となっており、4階建て以上も建てやすく、9階建てまでの製品を持つパナホームの特徴を打ち出しやすい」と話す。
パナホームでは7月1日に高層階エリアと位置付ける東京・墨田区(錦糸町)に日本初となる7階建て住居のモデルハウスをオープン。さらに7月22日には、環状線内となる大阪・難波に、5階建ての店舗、賃貸ルーム付き二世帯住宅のモデルハウスをオープンした。
東京・錦糸町のモデルハウスでは、7月17日までの約半月で来場が356件。そのうち193件が新たな顧客だという。また、大阪・難波のモデルハウスは、「7月15日からの3連休にプレオープンしたところ、3日間で、1カ月分の来場予定数に達した」(武田氏)という注目ぶりだ。
錦糸町の住宅展示場にオープンしたモデルハウスでは、1階および2階を店舗フロア、3階がオフィス向け賃貸フロア、4階が住居向け賃貸フロアを2室、5〜7階を自宅フロアとしており、総事業費は約3億円。店舗フロアの家賃収入が、2フロアそれぞれで30万円、オフィスで30万円、住居向け賃貸が15万円で2室を想定し、合計で月120万円を想定。月90万円の返済と、エレベーターなどの運用費、税金などを含めても、自己資金なしで建築できる計算になっているという。
「都会の空き地は、あなたの家の『上』にある」というのが、パナホームの多層階事業のコンセプト。都心部では、多層階住宅への関心はますます高まりそうだ。
著者プロフィール
大河原克行(おおかわら かつゆき)
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、25年以上にわたり、IT産業、電機業界を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、ビジネス誌、Web媒体などで活躍。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、AVWatch、クラウドWatch、家電Watch(以上、インプレス)、日経トレンディネット(日経BP社)、ASCII.jp(KADOKAWA)、ZDNet(朝日インタラクティブ)などで連載記事を執筆。夕刊フジでは「まだまだスゴい家電の世界」、中日新聞では「デジモノがたり」を連載中。著書に、「松下からパナソニックへ 世界で戦うブランド戦略」(KADOKAWA)、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「図解 ビッグデータ早わかり」(KADOKAWA)などがある。近著は、「究め極めた『省・小・精』が未来を拓く――技術で驚きと感動をつくるエプソンブランド40年のあゆみ」(ダイヤモンド社)。
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