三菱UFJ「約1万人削減」 銀行員受難の時代がくる:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
銀行員が再び受難の時代を迎えようとしている。各行は低金利による収益低下とフィンテックの普及(異業種の参入)という2つの課題に直面しており、大幅なコスト削減が必至の状況だ。銀行業界は近い将来、大量の人員削減を余儀なくされる可能性が高いだろう。
RPAによる業務自動化は銀行と相性がいい
フィンテックは、時として銀行の収益拡大のチャンスと捉えられることもあるが、現実には逆の要素が強い。金融テクノロジーが普遍化してきたことで、異業種からの参入が容易になり、銀行の業務が脅かされようとしている。これから先、従来型システムの運用で、銀行が収益を伸ばすことは困難になっていくだろう。
こうした状況から三菱UFJグループでは、組織全体のスリム化を実施し、利益を出しやすい体質に変えていく方針を固めた。その具体的な目標が9500人分の労働力削減というわけだ。
スリム化はいくつかのフェーズに分けて実施される可能性が高い。最初に導入されるのは、おそらくRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と呼ばれる手法だろう。
これは、業務を新たにシステム化するのではなく、既存システム上での操作をソフトに覚えさせ、一連の業務を自動化していく手法である。簡単に言ってしまうと、Excelのマクロ機能(手順を記憶して、自動的に実行させる機能)に近いものだが、複数のアプリケーションにまたがって、大規模に実行する様子をイメージすればよい。
新規に情報システムを構築してしまうと、かえってコストが増加し、当初の目的とは逆効果になる可能性がある。また高度に設計された情報システムは、業務プロセスの変化に弱いという欠点もある。商品やサービスが変更された場合にはシステムも更新する必要があるが、この頻度が高すぎるとやはりコスト高を招く。
RPAを使えば、既存のシステムに大きな変更を加える必要がないので、基本的に低コストで業務を自動化できる。しかも銀行の場合にはこのシステムを導入しやすい土壌がある。
RPAは同じ作業を繰り返すような定型業務の自動化に最も効果を発揮する。一方で、イレギュラーな対応が多い業務の場合、RPAを導入してもそれほど生産性は高まらない。銀行業務は圧倒的に定型業務の割合が高く、銀行は導入に一番向いている業種とも言われる。メガバンクが本格的にRPAを導入すれば、かなりの業務手順を簡略化できるはずだ。
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