三菱UFJ「約1万人削減」 銀行員受難の時代がくる:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
銀行員が再び受難の時代を迎えようとしている。各行は低金利による収益低下とフィンテックの普及(異業種の参入)という2つの課題に直面しており、大幅なコスト削減が必至の状況だ。銀行業界は近い将来、大量の人員削減を余儀なくされる可能性が高いだろう。
仮想通貨もコスト削減の一環
三菱UFJグループは既存業務の自動化に加え、店舗のコスト削減も同時並行で進めていく可能性が高い。例えば、これは三菱UFJグループの事例ではないが、みずほ銀行とソフトバンクが設立した合弁会社J.Scoreは、9月からAIを活用した融資サービスをスタートさせている。J.Scoreは、審査から手続きまで、ほとんど全てのプロセスがネットで完結するので、業務に従事する人数を大幅に削減することが可能だ。
最近、話題のデジタル通貨も実は同じ文脈で理解することができる。三菱UFJグループは10月2日、ビットコインで使われているブロックチェーンの技術を使ったデジタル通貨「MUFGコイン」を初公開した。このサービスは通貨という名称が付いているが、1円=1コインに変換する仕組みなので、厳密には通貨ではなく既存の電子マネーの一種である。だが一般的な事業者ではなく、銀行がこうしたサービスに乗り出した意味は大きい。
先進国の中で日本は、突出して現金利用比率が高く、銀行は現金の管理や輸送に多大なコストをかけている。現金のやり取りがこうした電子マネー系にシフトすれば、現場の事務作業は大幅に減少し、店舗の運営コストを下げることができる。
また電子マネー系の情報システムは、勘定系と呼ばれる既存の銀行の決済システムと比較して、はるかに低コストで構築・運用が可能である。一連のサービスが普及すれば、店舗費用に加えシステム経費も同時に削減できるだろう。
同グループでは一連の取り組みの結果として、1200億円のコスト削減効果を見込んでいる。内訳の詳細は不明だが、9500人分の労働力が削減される話と考え合わせると、人材シフトだけにとどまらず、自然減なども含めた人員削減の効果が考慮されている可能性は高い。
銀行員は、不良債権問題から解放されたのもつかの間、再び大きな試練に直面しようとしている。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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