果たして8Kは普及するのか? 国内電機メーカーに温度差:積極派のシャープに対し……(3/5 ページ)
8Kの実用放送が2018年12月1日からスタート。年内には8Kが一般家庭でも視聴できる環境が整うというわけだ。だが、8Kに対する国内電機メーカー各社の足並みはそろっていない。年初に米国・ラスベガスで開催された「CES 2018」でも垣間見られた。
パナソニックが慎重になるワケ
一方で、パナソニックとソニーは、8Kに対しては、現時点では、慎重な姿勢を見せている。
メインブースに家電製品を展示しなかったパナソニックは、ホテルの別会場で、欧州での先行発売を予定している4K有機ELテレビなどを展示したものの、8Kに関する展示はまったく行わなかった。
同社では、8Kテレビの製品化については検討しているものの、具体的な商品化には慎重だ。「8Kがコンシューマ市場に本当に受け入れられるかを見極めなくてはならない。18年12月から開始する8Kの実用放送開始に合わせて、テレビへの搭載あるいは外付け受信チューナーによる受信対応を検討している」と述べる。
また、8Kテレビについては、「75型以上の大画面テレビで効果が発揮される」と語っており、大画面サイズでの商品化が前提となりそうだ。
パナソニックのテレビ事業は、有機ELパネルを搭載した製品をフラッグシップに位置付けており、そこに同社がプラズマテレビ時代から培ってきた自発光技術などが生かせると考えている。当然、8K時代においても、有機ELをフラッグシップに位置付けるというのが自然な流れになるが、現時点では、8K対応においては液晶パネルの開発が先行しており、仮にパナソニックが8Kを商品化した場合にも、まずは液晶パネルで投入する可能性が高い。
8Kへと高精細化すると画素部(発光部)の面積が小さくなるため、明るさを確保しにくいという課題があり、この点で有機ELは不利と言われている。それに対して、液晶は、発光部を大きく取れるため高精細化しやすく、8K化には有利とされているからだ。
同社では、「最終的には、有機ELの方が、8Kにおいて真価を発揮できる」と見ており、テレビ向け有機ELパネルを生産するLG電子が、今後、技術的課題をどう解決するのかが注目される。CES 2018では、パネルの生産を行うLG Displayが、招待客だけを対象に、88型の8K有機ELパネルを公開しており、量産化に向けて準備が進んでいることを示している。有機ELパネルの8K化の動きが注目される。
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