人気者になるために、フォロワー購入はズルいことなのか:世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)
TwitterのフォロワーやFacebookの「いいね」の数を大量に購入している――。米ニューヨーク・タイムズ紙が購入者を実名で明らかにしたが、こうしたズルい行為のどこに問題あるのか。私たちの生活には関係ないと思っていたら……。
フォロワーを買っていたのは20万人以上
今、ネット上では、Twitterなどの購入は日常的に行われている。例えば「twitter follower buy」と英語で検索をかけると、いくつものサービスが検索のトップに広告として現れる。
ニューヨーク・タイムズの記事を見るまでもなく、以前より、そんなサービスに需要と供給があるのは知られている。だが今回の記事で特筆すべきは、Devumiという企業が、実在する人物の写真やプロフィールを“盗み”、名前を一文字違いにするなどして、あたかも実在する人物がフォローしているかのように見せていた、といった手口だった。他人のTwitterのプロフィールを盗むなどして作られたフェイクのアカウントが使われ、多くのアカウントはボット化(自動化)され、同社はフォロワーや「いいね」を売っていた。
フォロワーを買っていたと暴露された人の数は20万人以上にも上る。その長いリストには、リアリティ番組の出演者やコメディアン、プロのアスリートや牧師もいた。さらに作家やジャーナリスト、そして驚くことに、Twitter社の女性取締役もフォロワーを購入していた。大手テック企業の創業者も購入者だった。
中国の国営通信社である新華社通信も、Devumiから数十万のフォロワーとリツイートを購入していた。ちなみに中国ではTwitterは禁じられているため、国外で投稿を拡散させたり、国外での支持を多く見せるために、世界に向けたプロパガンダの一環としてフォロワーやリツイートを水増ししていていたことになる。
もちろんこうした行為はTwitterだけで行われているのではない。FacebookやInstagramでも偽アカウントは問題視されている。またYouTubeの再生回数も買える。
フェイクのアカウントはこんな使途もある。16年の米大統領選挙ではロシアの情報機関が大量にFacebookでフェイクのアカウントを作り、民主党のヒラリー・クリントン候補に不利になるようなフェイクニュースなどをばらまき、「いいね」を押したり、シェアしたりしていたのである。シェアが多い投稿はユーザーのページ上位に表示され、人の目に付きやすくなる。こうした行為が政府を巻き込んだ大騒動に発展し、当初はその指摘を否定していたFacebook側も調査を行うことになった。
結果、17年11月、Facebook社は投資家らに対して、偽アカウントの数が、それまで同社が見積もっていた数の倍にも上ることを認めた。この数は、少なくとも6000万人分にもなったとされ、数多くの偽アカウント(多くがスパムらしい)が存在していたことになる。個人の投稿やFacebookページ(企業や個人などが立ち上げることのできるWebサイトのようなページ)への「いいね」を売る業者もこうした偽アカウントを使っていると指摘されている。
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