現場から見たトヨタ生産方式 トヨタ副社長インタビュー(1):池田直渡「週刊モータージャーナル」【番外編】(4/4 ページ)
トヨタ生産方式は、世界のビジネスに多大な影響を与えた生産メソッドだ。トヨタ生産方式の重要な原点の1つに「にんべん」の付いた自働化とカイゼンがある。ロボット時代の自働化とカイゼンとは果たしてどんなものなのか?
河合: だからそういうラインを作らせたんです。まずは全部手作業でエンジンを組めと、からくりは使って良いけど動力は使っちゃいけない。そこで実際の作業をする人は60歳以上の人。少子高齢化時代でもありますからそういう人を活用する。その作業環境をカイゼンするエンジニアは若手の30代、40代。作業する人は彼らの元の上司です。元上司が元部下の作った設備で作業するわけです。
池田: それは言うこと聞くしかないですねぇ(笑)。
河合: オヤジたちが「やりにくいじゃないか!」「重いじゃないか!」って文句言う。そうすると若いヤツは軽くするために一生懸命知恵を使って工夫するわけですよ。頑張ってうまいからくりを考えて軽くする。
そうするとまたオヤジに言われるわけです。「ちょっとやり易くなったけど、組み付けたときにちゃんと入ったかどうか確からしさがないぞ!」。そうするとまた若い連中が工夫して、ガチャンと最後まで入れないと治具が外れないからくりを作る。
こういうのを現場を知らない人間がやろうとすると、すぐセンサーを付けてカメラでチェックして入ったかどうか見ましょうとか言い出すんです。でもちゃんと取り付けないとジグが外れないからくりを作ったら、きちんと入るまで次の仕事に移れないでしょう。そっちの方が断然良い。そういうものを2年も3年もとことんやらせたら、ものすごく良いラインができました。
それでTNGAのラインを設計するときにそういう技能職の人たちを生産技術のエンジニアのところに連れて行って、今まで培ったノウハウを全部出して、こういうラインを作れと。だけどやっぱり生産技術のエンジニアは理屈と計算でやろうとするからどんどん複雑になってしまうんです。ですから、私が「やり直し!」。それを何度も繰り返して、今は非常に良いラインが出来上がりました。(次回に続く)
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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