なぜメルカリはホワイトな労働環境をつくれるのか?:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
メルカリの福利厚生がホワイトすぎると話題だ。多くの日本企業は働き方改革を実践するため、残業時間の規制などに躍起になるが、根本的な誤解も多い。メルカリの取り組みを知ることで働き方改革の本質が見えてくるはずだ。
働き方改革の本質はマネジメント
子どもを持つ社員に対する支援も手厚い。産休・育休期間中の給与については、女性の場合には約8カ月間、男性の場合には約1.5カ月間、全額が保証される。子どもを産むことも支援しており、不妊治療については、年齢に関係なく費用の全額もしくは一部を会社が負担してくれる(治療開始から10年間)。
子どもが病気になった場合のベビーシッター代や、認可外保育園に入園する場合の費用差額なども会社負担にできるほか、全社員が死亡保険に加入する制度があり、万が一のときにも家族が路頭に迷うことはない。ユニークなところでは、結婚マッチングサービスも無料で利用できるという。
多くの人は、この話を聞いて条件の良さに驚くだろうが、重要なのはそこではない。福利厚生はそれほどコストのかかるものではなく、社員の年収を上げることに比べれば企業側の負担は少ない。ある程度の収益力を持つ大手企業であれば、実現はそれほど難しくないはずだ。
では、なぜメルカリなど一部の企業だけがこうした制度を導入できて、多くの従来型日本企業では実現できないのだろうか。
フレックスタイム制であれば、すでに20年以上も前から、一部の大企業を中心に導入が進められてきた。だが、現実にはうまく機能しないことも多く、最近ではフレックスタイム制を撤廃するところも出てきている。
フレックスタイム制では、各社員は始業時間と終業時間を自分で調整できるが、コアタイムの時間帯は必ず会社にいなければならない。この時間が短ければ短いほど、社員は自由に働けるわけだが、現実にはいろいろとやっかいな問題が発生する。
例えば、メルカリのように午前中の出社が自由となると、午前中に何かトラブルが発生した場合、偶然、午前中に会社にいた社員に大きな負荷がかかる。フレックスタイム制度を取りやめた企業の多くは、こうした社員の不公平感を理由にしている。
制度をうまく運用するためには、誰がどの業務に対して責任を持つのか事前にはっきりさせておくか、仕事の偏りも含めて、各人の成果を正しく評価できるマネジャーを配置する必要がある。つまり、制度をうまく運用できるのかは、全てマネジメントの質にかかっているのだ。
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