「指混入」だけじゃない 幸楽苑が日高屋に負けた理由:経営体質に差(2/4 ページ)
ラーメンへの異物混入事件でブランドイメージを大きく損なった幸楽苑。この事件が現在に至るまでの不振の原因として指摘される。しかし、本質的な敗因は別のところにもあった。
ラーメンの安売りで成長
幸楽苑の成長を支えた1つの戦略がラーメンの安売りだった。2000年代に販売を開始した「中華そば」は304円(税込、以下同)で、「麺類の売り上げの3割を占めていた」(広報担当者)。税抜き表示価格の「290円ラーメン」は強い印象を与えた。
だが、原材料や人件費の高騰で販売を15年5月に終了させ、現在は「新・極上中華そば」(421円)が最安値のラーメンとなっている。
看板メニューだった中華そばの販売をやめたことが、幸楽苑の競争力にマイナスの影響を与えた。直営既存店の客数は15年から前期比マイナスの状況が続く。広報担当者も「中華そばの販売をやめた影響が大きかった」と認める。
なぜ、ラーメンの値上げが客離れを招いてしまったのだろうか。
どんな業界にも、客が価格を特に気にする商品がある。例えば、焼肉店では注文数が多い並カルビや生ビールが該当する。客はその商品の価格を見て「この店は高い」「この店はお得だ」と判断する。一方、プレミアムビールや上カルビの値上げはそれほど気にしない客が多い。牛丼チェーンでいえば牛丼並盛が該当し、大手3社は価格改訂には常に神経をとがらせている。実際、牛丼並盛を値上げした吉野家は客離れに苦しんでいる(関連記事:「松屋とすき家に「牛丼並盛」の値上げをためらわせた「吉野家の悪夢」)。
このように、価格の変化が客数に大きな影響を与える商品を「価格弾力性が高い商品」と表現する。ラーメンチェーンの場合は、最も安くてシンプルなラーメンが該当する。幸楽苑は、客の来店動機につながる中華そばを値上げしたことで、店舗の魅力を失ったのだ。
さらに、いま流行している「ちょい飲み」需要に応えにくいのもマイナスに作用している。郊外店には車で来店する客が多いため、アルコールの売り上げは伸びにくい。
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