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戦う相手が強すぎて衰退した東京チカラめし:何が悪かったのか(2/4 ページ)
急速に店舗数を増やして大いに注目された東京チカラめし。しかし、衰退するのも早かった。理由として「店舗の急拡大にオペレーションが追い付かなかった」「店舗の清掃が行き届いていなかった」などが挙げられるが、本当にそれだけが原因なのだろうか?
牛丼チェーンが寡占になる理由
東京チカラめしが“負けた”理由を解説する前に、一般的な飲食業界と比べたときの牛丼業界の特徴に触れておこう。
飲食業界を分析する指標に「在庫回転日数」がある。これは、在庫が何日かかって回転したのかを表す指標で「棚卸資産÷1日の売上原価」で求められる。棚卸資産には商品、製品、仕掛品、原材料などが含まれる。
在庫回転日数について飲食店の経営コンサルティングを手掛けるスリーウェルマネジメントの三ツ井創太郎社長が解説する。
「在庫回転日数が短いということは、商品の回転率がよく、効率的な収益を上げている状態(在庫の現金化が早い)。一方、在庫回転日数が長いということは、過剰な在庫などを抱えており、在庫の現金化スピードが遅いということだ。牛丼チェーンの場合、他業態とくらべて在庫回転日数が長くなるのはそのためだ。在庫をあえて抱えられるのは資本力のある企業に限られる」
牛丼チェーン大手の在庫回転日数を他の外食チェーンと比較してみよう。すき家を運営するゼンショーホールディングスは37.1日(17年3月期)、吉野家を運営する吉野家ホールディングスは30.1日(18年2月期)だ。他業態は数日〜10日程度と短い。
牛丼チェーンは資本力がないと展開できない業態であり、大手3社の寡占状態となっているのはそのためだ。
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