戦う相手が強すぎて衰退した東京チカラめし:何が悪かったのか(3/4 ページ)
急速に店舗数を増やして大いに注目された東京チカラめし。しかし、衰退するのも早かった。理由として「店舗の急拡大にオペレーションが追い付かなかった」「店舗の清掃が行き届いていなかった」などが挙げられるが、本当にそれだけが原因なのだろうか?
都市型における牛丼店の戦略
東京チカラめしは繁華街を中心に出店していた。一般的に、繁華街の小型牛丼店はランチなどのピークタイムにおける客数が店舗全体の売り上げを大きく左右する。店舗の業績を分析する指標としては「客席回転率=客数÷客席数」がある。繁華街は家賃が高いため、店舗面積を広げることが難しく、客数回転率が重要になる。
東京チカラめしの焼き牛丼には「焼く」というオペレーションがあり、すき家や吉野家のように「よそう」だけの店舗と比べて提供時間が長くなる。つまり、ピークタイムに客数が稼げないのだ。
繁華街の牛丼店で食事をする客は「早い」「安い」「うまい」を求めている。提供時間の遅れは客のニーズに合っていなかった。確かに、焼き牛丼は「うまい」の面で他社より有利だったかもしれない。しかし、「早い」を犠牲にしたことのマイナスが大きかった。
オペレーションで差が出た
大手3社に戦いを挑んだことで、東京チカラめしは非効率なオペレーションを露呈させることになる。店舗の急拡大に人材育成が追い付かず、客からは「提供が遅い」「店舗が不衛生だ」という声があがった。
大手牛丼チェーンは店舗のオペレーションが高度に発達している。大手3社には日本語に不慣れな外国人店員でも店舗を効率的に運営できるノウハウがある。前述した通り、牛丼業界は資本力がある企業によって寡占化が進んでいる業界だ。資本力を背景に高度な店舗ノウハウを蓄積しており、力の差は歴然だった。
こうして東京チカラめしは徐々に追い詰められていった。三光マーケティングフーズの有価証券報告書(14年6月期)では、苦戦する背景として「米国産牛肉等の主要食材の高騰、コンビニエンスストア等、業種を越えた企業間競争の激化、雇用環境の変化に伴う人員不足、さらには平成26年4月の消費税増税による収益力の低下」を挙げている。そして、同社は居酒屋業態に経営資源を集中させるため、東京チカラめしの業態を大幅に縮小させることを決定した。
関連記事
- スシローの進化についていけなかったかっぱ寿司
かつて業界をリードする立場だったかっぱ寿司が、競合他社に次々と追い抜かれている。逆転を許してしまった背景にはいったい何があるのだろうか。 - 「指混入」だけじゃない 幸楽苑が日高屋に負けた理由
ラーメンへの異物混入事件でブランドイメージを大きく損なった幸楽苑。この事件が現在に至るまでの不振の原因として指摘される。しかし、本質的な敗因は別のところにもあった。 - 売り場を減らしたのに、なぜ崎陽軒のシウマイはバカ売れしているのか
東京や新横浜で新幹線に乗ると、車内でビールを飲みながら「シウマイ」を食べているサラリーマンをよく目にする。崎陽軒の「シウマイ弁当」だ。駅弁市場は縮小しているのに、なぜシウマイ弁当は売れているのか。その理由を、同社の担当者に聞いたところ……。 - 6畳弱の狭い物件に、住みたい人が殺到している理由
6畳弱の狭い物件が人気を集めていることをご存じだろうか。物件名は「QUQURI(ククリ)」。運営をしているピリタスの社長に、その理由を聞いたところ……。 - 「食べ放題」を強化する牛角の“出遅れ感”
「焼肉デート」という言葉を生んだ牛角は、落ち着いて飲み食いができる「居酒屋焼肉」の業態で国内最大手に上り詰めた。しかし、ライバルが食べ放題の業態に次々参戦。キャッチアップはできるのだろうか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.