“不採用”の応募者をAIで追跡 そのワケは? 「HR Tech」最新事情:“働き方改革”にも効果アリ(1/2 ページ)
人事部門の業務をテクノロジーで効率化する手法「HR Tech」。現在はどこまで進んでいるのだろうか。人材分野に特化した投資活動を行うPERSOL INNOVATION FUNDの加藤丈幸代表パートナーを取材した。
人事部門の業務をテクノロジーで効率化する手法「HR Tech」。近年は勤怠管理・給与計算・人事台帳システムなどのクラウド化が進んでいるほか、こうしたシステムに登録されたデータを分析して人材の相性を算出し、チーム構成を最適化する技術なども発展を遂げている。
人材分野に特化した投資活動を行うPERSOL INNOVATION FUNDの加藤丈幸代表パートナーによると、HR Techの進化を支えるのは米国のIT企業や、日本のベンチャー企業だという。各社は新たな分析手法や人事向けITサービスを次々と開発し、「既存の“勘と経験”に頼った業務の変革を進めている」(加藤氏、以下同)という。
では現在、具体的にどんな手法がHR Techのトレンドになっているのか。加藤氏は4月26日に報道陣向け説明会を開き、さまざまな先進事例を紹介した。
応募者とAIがチャットで会話
加藤氏によると、近年はHR Techの中でも、中途・新卒採用の応募者管理、選考の日程調整、評価データの蓄積などに使われる採用管理システム(ATS)の発展が著しいという。
「従来のATSは、応募者のリストや評価データを蓄積するなどの機能が一般的で、選考の日程調整は人事が手作業で行っていた。しかし現在は、AI(人工知能)がチャットボットで候補者とやりとりし、自動で日程調整を行うサービスが出てきている」
やりとりの自動化に秀でた企業として、加藤氏は米Mya Systems(マヤ・システムズ)を挙げた。同社は、チャットボットが応募者と会話する中で得た過去の経歴データを分析し、導入企業に合うかどうかを自動で判断するサービスを展開している。
また米国では、採用の過程で“不合格”にした人のデータベースを構築し、自動でアップデートする技術も発展しているという。
「ある時点では企業ニーズに合致しなかった人材でも、努力すれば2〜3年後に経歴が変わり、求める人材に成長している可能性がある。こうした動きをキャッチアップするため、ビジネスSNS『LinkedIn』などの情報をAIが自動で収集し、目ぼしい人材が現れるとアラートを発する仕組みだ。優秀な人材をいち早く採用できるメリットがある」
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