“不採用”の応募者をAIで追跡 そのワケは? 「HR Tech」最新事情:“働き方改革”にも効果アリ(2/2 ページ)
人事部門の業務をテクノロジーで効率化する手法「HR Tech」。現在はどこまで進んでいるのだろうか。人材分野に特化した投資活動を行うPERSOL INNOVATION FUNDの加藤丈幸代表パートナーを取材した。
チームの結束力をテクノロジーで強化
従業員の満足度調査を行うサイクルを早めて問題点を素早く抽出し、業務のパフォーマンスを高める取り組み「パルスサーベイ」でのIT活用も進んでいる。
「年に1〜2回のみ満足度調査を行っている企業が多いが、これでは組織の状況をリアルタイムで把握できない。こうした課題を解決するため、問題数を少な目に設定し、1週間〜1カ月単位で組織の状況をチェックできるサービスが台頭している。日本では、アトラエの『wevox』などが代表例だ」
テクノロジーを活用してチームの結束力を高める手法も発展している。「日本のベンチャーFringe81の『Unipos』は注目のサービスだ。『いい仕事をしているな』と感じた同僚にWeb上で『ピアボーナス』と呼ぶポイントとコメントを送れるもので、導入企業はたまったポイントを成果給として支払うもの。従来のマネジメント手法では見いだせなかった、数字に現れない“いい仕事”をしている人が分かり、組織を強くするだろう」
人事部にデータサイエンティストを配置
人事部にデータサイエンティストを配置する動きも、米国を中心に進んでいる。「人事専門の分析担当者は『ピープルサイエンティスト』と呼ばれている。この肩書を持つ人材は現在全世界に約80万人存在し、ここ1年間で約4倍に増えている」と加藤氏は解説する。
主なデータの活用法は、退職者の予測などが多いという。「人事評価、在籍期間、等級、勤怠情報などを総合的に分析し、辞めそうな人を統計的に予測することで、早期のケアにつなげられる。日本では、ネット広告のセプテーニなどがこの技術をいち早く取り入れている」
このほか、データを分析することで「特定の人材が部署異動した際に活躍できる確率」「候補者と相性がよい面接官」なども算出できるという。
“働き方改革”にはHR Techが不可欠
加藤氏は「このように日米でHR Techが盛り上がりを見せているが、日本はまだ米国には追い付いていない。中小企業を中心に、2000年代中盤に導入した人事システムを使い続けており、生産性が上がらない企業も依然として多い」と指摘。「“働き方改革”を進めるには、より多くの日本企業にHR Techが浸透することが必要だ」と話している。
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