1センチ単位で指定できる家具サービスの舞台裏:ありそうでなかった(2/4 ページ)
「デザインは好きだけどサイズが大きすぎて諦めた」「ちょうどいいサイズだけど色が気にくわない」――家具を買うときに、こんな経験をした人も多いだろう。そんな不満を解消するサービスが2018年3月に誕生した。自分の好きな色やサイズの家具を手ごろな価格で購入できるビジネスが実現するまでには多くの苦労があった。
新サービスを実現したテクノロジー
自動的に価格を計算したり、図面を作成したりできるのはなぜなのだろうか。仕組みを峯浦社長が説明する。
「当社のCTO(最高技術責任者)は『分散処理』の専門家です。これは、簡単にいうと、1つの処理を分散して行うことでスピーディーに計算できる方式です。『SIMPLE BOX』は背板や天板など計5枚の板で構成されています。高さや奥行によって、商品の製造コストが変わります。例えば、サイズによって『ダボ穴』をあける数が異なり、工場で使う加工機械も変わってきます。製造コストから価格を導きだしたり、1つ1つの図面を自動で生成したりするには、分散処理に基づいたシステムが欠かせません」
峯浦社長によると、「Yourniture.」を支えるキーとなるテクノロジーがこの分散処理のシステムだという。
工場との交渉に苦労した
システムができても、それを受け入れてくれる工場を見つけなければいけない。峯浦社長は工場との交渉で苦労することになる。
「SIMPLE BOX」の製造をしている工場はインドネシアのジャカルタにある。東京ドームと同じ5ヘクタールという広大な敷地で、500人以上の従業員が働いている。家具や楽器などを製造しており、日本向けの工場としては世界有数の生産力があるという。
峯浦社長が「Yourniture.」の事業プランを持ち込んだ当初、工場の担当者はあまり乗り気ではなかった。工場からすると、同じ商品を大量に生産したほうが効率が良い。1つ1つの家具をオーダーメイドで製造するのは、手間がかかる割にはもうからない仕事だ。担当者の説得は簡単ではなかった。
さらに、生産ラインで働く職人に向けてどんな製造指示書をつくるかという問題もあった。クライアントからの発注に基づいて、職人が作業手順、工程、使用する加工機械を決めるというのが従来の仕事の進め方だった。新サービスを実現するには、注文ごとに毎回違う製造指示書を職人に渡す必要がある。作業内容を的確に伝えるだけでなく、職人の働きやすさなども考慮した内容でないといけない。
こうした困難を峯浦社長は1つ1つ解決していかなければいけなかった。
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