センベロの王者 「晩杯屋」を創業者が手放したワケ:長浜淳之介のトレンドアンテナ(後編)(3/5 ページ)
わずか10年で東京を代表する立ち飲みチェーンに成長した「晩杯屋」は、丸亀製麺を展開するトリドールホールディングスに買収された。なぜ、自力での成長を諦めたのだろうか。
大量出店に転じた理由
ゆっくりと店舗を増やしてきた晩杯屋だが、16年から大量出店に転じたのには理由がある。
晩杯屋を運営するアクティブソース(東京都品川区)は、16年4月にエムグラントフードサービス(東京都渋谷区)と、出店拡大を目的としたFC事業開発に関する業務提携を結んでいる。エムグラントのニュースリリースによれば、首都圏で直営店舗およびFC店舗の出店を増加させて店舗の拡大を図り、FC本部として1年間で50店舗を目指すとしている。その成果が優秀事業者を表彰する「外食アワード2016」の受賞でもあったのだ。
エムグラントは、12年ごろに「ステーキハンバーグ&サラダバー けん」で大ブレークした。郊外の居抜き物件で開業し、繁盛店に軒並み変えることから「ロードサイドのハイエナ」と恐れられた井戸実社長が率いている。「けん」は最大で200店舗を超えたが、現在はすかいらーくが運営するステーキガストなど同業他社との競争激化と円安による輸入牛肉の高騰で、業態としてのうま味が薄れ、51店にまで減っている。
井戸氏は12年にスターゼンより「ふらんす亭」を経営するフードデザインを買収し、同社のオーナーになった。
しかし、最近の井戸氏は「けん」や「ふらんす亭」で培ったFC展開のノウハウを生かして、FC支援へとビジネスの軸を移している。井戸氏は、独立前にレインズインターナショナルや店舗流通ネットで立地開発に携わっており、特に店舗物件の開発を得意分野としている。
電光石火のごとき「けん」全盛時の展開は、そのノウハウを応用したもの。他社のFC支援の具体例としては「相席屋」が挙げられる。創業してからたった2年間で70店を展開できたのは、井戸氏のサポートがあったからだといわれる。
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