スルガ銀行のシェアハウス融資から見えてくる銀行の「ホンネ」:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
スルガ銀行による、シェアハウス向け融資が波紋を呼んでいる。不動産投資が一種のブームとなっていたが、カネを借りる側と貸す側の意識には天と地ほどの違いがある。スルガ銀行の融資問題を通じて、銀行のホンネを探った。
銀行が見ているのは貸したカネが返ってくるかだけ
大手企業の社員や公務員は、仮に不動産投資や住宅購入で失敗しても、周囲への見栄から、それを明らかにしたくないという意識が強く働く。自己破産しても会社を解雇されることはないのだが、自慢だったマンションを引き払って安い賃貸に移ったり、クレジットカードが持てなくなったり、クルマを手放すという事態に耐えられない人が多いのだ。
このため、不動産投資で赤字が出ていても、自分の給与から何とか返済に回し、体面を保とうとする。銀行にしてみれば、確実に金利と返済を進めてくれる上客ということになる。
従って、銀行は、物件よりも借り主の属性を見てカネを貸すという状況に陥りやすく、こうしたスタンスが行き過ぎると、今回のように、失敗が確実な物件にも融資するというところまで突き進んでしまうのだ。かぼちゃの馬車で融資を受けた人の多くは、比較的年収の高いサラリーマンが多いとされているが、これはうなずける話だ。
こうした安易な融資が許容されないのは当然であり、筆者は銀行をかばうつもりはまったくない。だが、カネを貸す人というのは、借りる人はまったく異なる視点を持っていることについては、よく理解しておいた方がよい。
不動産投資の初心者によくあることだが、銀行の融資が下りる物件は優良物件であると勘違いしてしまう。しかし、銀行は属性を見て融資の可否を判断しており、1棟目がうまくいったからといって2棟目の融資を申し込むと、年収の低さを理由に融資を断られることは日常茶飯事である。
銀行というのは基本的に貸したカネが返ってくるかどうかしか見ておらず、融資対象となる事業や物件の収益はあまり重視していない。これは、あらゆるローンに共通の話であり、銀行と付き合う時には、必ず意識しておかなければならない重要なポイントである。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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