コーヒーの「ネスレ」が無料でDNA検査サービス、真の狙いは:飲料メーカーがここまでやるのか(2/2 ページ)
ネスレ日本がDNA検査や食事分析などを通じてユーザー個人の健康状態を把握、商品を提供するサービスを始める。消費者のプライベートに売り込む同社独自のマーケティング手法だ。
ユーザーの「究極のプライベート」に売り込む
会見でネスレ日本の高岡浩三社長は「病気を予防したり健康寿命を延ばすためのトータルのヘルスケアのプラットフォームを拡大していきたい」と表明した。健康寿命にこだわる高岡社長の発言について、同社の担当者は「いい商品を売るだけでいい時代は終わった」と解説する。「日本人や日本社会の抱える問題解決が我々のビジネスにつながる。それは健康寿命。問題解決につながるビジネスでないと製造業は生き残れない」
同社は元々、ユーザーのプライベートに深く入り込むマーケティングを得意としてきた。代表的なのが「アンバサダー」と呼ばれる商品のファンを募り、自宅や職場にコーヒーマシンを無料で置いてもらう取り組み。欧米では一般的な「アンバサダーマーケティング」と呼ばれるもので、日本での先駆事例として成功した。昨年10月にスタートしたこの「ネスレ ウェルネス アンバサダー」は、その“健康版”とも言えるものだ。
ユーザーは抹茶の「マシーン」を家庭で無料レンタルできる。抹茶を飲むユーザーは、まず自分の食事の状態などについてLINEを通じてネスレから質問される。回答されたユーザーの健康状態を踏まえ、ネスレ側はビタミン・ミネラルが入った4種類の抹茶カプセルから最適なものを選ぶ。
「ユーザーに足りていない栄養を補う習慣を付けてもらう」のがこのサービスの目的で、利用件数は既に9万件を突破した。そして、健康というユーザーによって異なる問題を解決するというコンセプトを突き詰めた結果、行き着いたのが新サービスの食事分析やDNA検査だと言える。
DNAや血液は、いわば「究極のプライベート情報」だ。ネスレ日本はこれまでも無料のコーヒーマシンを使い職場や家庭に置いてもらうなど、プライベートに“入り込む”アイデアで成功してきた。「マス広告を使いマスに売る」食品メーカーの伝統的な手法に逆行するネスレ流マーケティングが、どこまで通用するか注目される。
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