AIがライバルに!? 城繁幸さんに聞くHR Tech時代の人事サバイブ術:HR Techは人事にとって魔法か、それとも脅威か(2/3 ページ)
人事コンサルタントで作家の城繁幸さんがHR Techで日本の人事がどう変わるかを語った。AIが判断するため人事から人事権が無くなる一方、アナログな役割が重要になるとみる。
アナログとデジタルの調整役に
――人事部の権力が低下した世界で人間の人事に求められる役割は何ですか?
城: デジタルとアナログの接点に立つ調整者としての役割が大きくなると思います。HR Techが「こういう人はこの部署に配属が望ましい」とデータを出しても、それに基づいて簡単に配属できるとは限らない。事業部も従業員本人の都合もある。アナログなやりとりが必要になる。
部品などを扱う事業部門なら、データやデジタルに基づいたプログラムで仕事の多くが済む可能性がある。人事は扱うのが人間なのでそうはならない。「AI様が言ったからあなたはクビ、あなたは昇進」とはならないのです。
もちろん、人事が今までのように人事権をもって全部決めるというわけにはいかないでしょう。調整役に回るべきです。
――例えばどんな場合で人間の人事の真価が問われますか
城: AIで人の評価が決まるテクノロジーが確立され、誰をどこに配属するのかすらビッグデータで入社前から分かるとしたら、人事のこれまでの経験に頼った仕事は価値がなくなるでしょう。
しかし、人間は数字通りに動かない生き物です。イレギュラーに対応する能力も今後残る。どこの部署でも成果を上げていた優秀な人が、突然メンタルを壊してしまうことはよくあります。予測はできないのです。そういう場合、1回休んでもらうとか違う部署に配属するとか、AIでは判断できないと思う。
現状、HR Techができるのは過去の勤務態度や成績に基づいた分類だけです。特に日本の企業では従業員を指名しての一方的な解雇はできません。本人の希望とHR Techの出した評価をマッチングすることは恐らく難しい。それができるのはプロの人事です。
例えば、工場で早期退職を勧めるために人事が全対象者と面談することはよくあります。残すべき人、絶対に辞めさせる人、どちらでもいい人を分類し面談で誘導する。HR Techがとって代わるのはこのリストを作るまでなのです。
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