伊東温泉の現状から地方の観光地の縮図が見えてきた:わびしく見える温泉街の実情は?(2/3 ページ)
「伊東に行くならハトヤ! 電話はヨイフロ」というテレビCMをご存じの方も多いだろう。かつて伊東は温泉街として全国にその名を轟かせた。しかし最近、伊東を訪れた人々は皆、街に活気がない、寂れているという印象を持つ。その現状を探ってみたら日本の観光産業の縮図が見えてきた。
主要な観光地は盛況
市内の観光施設の来訪者数を見ると興味深いことが分かる。市内には「伊東マリンタウン」という道の駅が海岸線近くの国道135号沿いにあるが、年間約237万人(16年)の入場者数があり、とても多いのだ。ここにはレストラン数軒、おみやげ売り場、シーサイドスパ、遊覧船、マリーナを備え、市内の駐車場不足問題がある中で、298台分の無料駐車場を完備する。
また、伊東の観光地として名高い城ヶ崎海岸は吊り橋が象徴的で、海の向こうには大島を眺め、水しぶきを上げる断崖絶壁は壮大だ。ここには年間約193万人の来訪者がある(17年)。
やはり、伊東の象徴ともいえる大室山(標高580メートル)は山焼きによって、木があまりなく、芝生のように見える萱(かや)に覆われた不思議な山だ。リフトで山頂まで6分の登山(現在、徒歩登山は禁止)だが、子どもでなくてもワクワク感がある。山頂には周囲1キロほどの火口があり、遊歩道で回れる。ここは大パノラマの絶景だ。大室山の年間観光客数は約82万人(16年・リフト利用者数)だ。さらに、伊東市の中心地により近いところに小室山(標高321メートル)がある。ここもリフトで登山ができ、景色が良い。
一方、前述した市内中心部の東海館の年間来訪者数は約5万1000人(16年)しかいない。伊東駅近くのアーケードのある「キネマ通り」を歩いても閑散としている。観光客が伊東駅を中心とした市街地を出歩かない状況が寂れた印象を与えているようにも思う。
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