メルセデス・ベンツが「働く人の高齢化」を“チャンス”と捉える意味:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
高齢化が進んでいるのは日本だけではない。自動車ブランド「メルセデス・ベンツ」の高齢化に対する取り組みが注目されている。「年齢を重ねること」に対する意識を変える考え方は、日本企業にとっても参考になる。
高齢化が進むメルセデス・ベンツの「意識改革」
メルセデス・ベンツでは社内の高年齢化が問題視されているという。事実、従業員13万6000人の平均年齢は44.7歳で、決して若いとは言えない。
そんな背景から、技術などを継承をする目的で、ベテラン社員がビデオ・メッセージを残し、若い世代に引き継いでいくというプロジェクトを導入し始めているという。またトレーニングとして、50歳以上の社員と若い見習いなどを意図的に組ませて、共同作業を実施させるという試みもあるらしい。また、これは今では多くの企業で行われていると思うが、定年後も短期的に契約を結ぶなどして、まだまだ現役で働ける人たちを活用している。
だがベンツでは、さらに興味深い取り組みが始まっている。ドイツの首都ベルリンに、人々の「年齢」に対する意識を変革させるための展示施設をオープンさせたのだ。
一体どんな「展示」なのか。ベルセデス・ベンツによれば、「私たちは企業として、人口動向の変化をチャンスだと捉え、新たな世代の変化に適切な労働形態を発見すべく、手助けとなるようなモデルを構築する。そのため、メルセデス・ベンツは『YESイニシアチブ』をスタートした。考え方はこうだ。仕事において新たなコンセプトを革新的な考え方で発展させるために、年齢分布の変化と、新たな人口構造を活用する。『EY ALTER(アイ・アルター)』という展示を作ることで、メルセデス・ベンツはアイデアの広場を提供する」という。
なんだか難しく感じるが、要は、高齢化を好機と捉え、企業としての考え方を見直そうということだ。つまり、ベテランに対する意識を改革したい。そこで「YESイニシアチブ」を立ち上げたのだが、このYESは「Young, Eperienced, together Successful」の略だ。全ての年代がそれぞれに経験や創造性、ものの見方が違い、どの世代にも成功するポテンシャルがあるという。
現在、一般にも公開されている「EY ALTER」にはメルセデス・ベンツの社員も大勢「研修」に訪れているという。英ロイター通信によれば、6月半ばの時点で、メルセデス・ベンツの工場担当2500人が訪問しているという。
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