メルセデス・ベンツが「働く人の高齢化」を“チャンス”と捉える意味:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
高齢化が進んでいるのは日本だけではない。自動車ブランド「メルセデス・ベンツ」の高齢化に対する取り組みが注目されている。「年齢を重ねること」に対する意識を変える考え方は、日本企業にとっても参考になる。
「年齢」について考え直す体験
施設には何があるのか。施設の入り口は「若い人」「年配の人」と別れており、どちらに入ってもいい。中に入ると、バランス感覚の調査や記憶テスト、チームワークなどさまざまなスキルを試すことができる。そこで実年齢とは違う、身体または経験の「年齢」を知ることができる。55歳の人でも、体力的には「35歳」と診断されるかもしれない。そういう体験から、年齢についてあらためて考えてもらおうというのだ。
実は、わざわざドイツを訪れなくとも、公式サイトには「EY ALTER」の説明ページがあり、その一端を感じることができる。そのページは英語とドイツ語のみだが、コンセプトや、メルセデス・ベンツが何をしようとしているのかという考え方はなんとなく分かる。今後、一般向けと企業向けに研修プログラムが利用できるようになるという。
ドイツでは、ダイムラーに限らず、企業の高年齢化が問題になっている。なぜなら、同国は欧州でも最も企業の高年齢化が進んだ国だからだ。ドイツでは2030年までに労働人口が200万人ほど減ると予想されており、それに伴って生産力も落ちると見られている。ドイツ政府は、30年までに定年の年齢を現在の65歳から67歳に徐々に引き上げていく予定で、高齢のベテランたちが現場に残ることになるだろう。
ただそこに問題が存在する。例えば企業は、従業員が高齢化することを否定的に見ているという現実だ。コンサルティング会社のデロイトは、企業への世界的な調査から、企業の41%が労働力の高齢化を「競争力へのマイナス要因」だと見ていると指摘している。
確かに、平均寿命が延びている現代では、65歳でも十分に現役でやれる人たちは多い。事実、定年後にアルバイトのような新たな仕事をしている人たちも少なくない。60歳代で引退し、その後も10年、15年と生産性があって、働く気満々なのに、それを生かさないのはもったいない。
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