葬儀業界に新風 ドウシシャの遺体冷却安置台は何がすごいのか?:ドライアイス問題を解決(2/4 ページ)
葬儀業界の“常識”が変わろうとしている。現在、遺体冷却の80%以上をドライアイスに頼っていると言われているが、ドウシシャが発売する吸熱式遺体冷却安置台「メモリアルベッド」ではペルチェ素子によって冷却できるのだという。
葬儀業界にもたらすメリット
メモリアルベッドは、葬儀業界にいくつかのメリットをもたらすという。1つはコストダウン効果だ。
ドライアイスは、1日10kgほど使用するという。この調達費用は2000円程度。さらに遺体の保管期間が長引けば、これにかかわる交換作業のコストも必要になる。これに対して、メモリアルベッドの電気代は1日約143円。月に15日間稼働した際には、月50万円以上のランニングコストの差が生まれるという。
しかも、ドライアイスの原料となる炭酸ガスの供給量が減少したことで、輸入幅が拡大したことも、ドライアイスのコスト増につながっている。「ドライアイスの原料は、輸入しにくい液化炭酸ガスへの利用を優先させているため、ドライアイスに回ってこないという点や、ドライアイスの輸入の98%を韓国に頼っているものの、輸送中に溶けて小さくなるためロスが大きいという問題もある。今後のコスト増の懸念もある」と中川氏は指摘する。
2つ目は、作業の容易性だ。
遺体を自宅や葬儀所で安置する場合には、ドライアイスの調達、交換、補充といった作業が必要だったが、メモリアルベッドでは、ベッドに安置するだけで、そのまま冷却を開始し、納棺、通夜、告別式、出棺まで継続的な冷却が可能になる。
「作業中の低温やけどや、二酸化炭素(CO2)中毒のリスクを低減できるほか、棺の底部に4つの冷却ブロック用の穴加工をすることで、納棺から出棺までメモリアルベッドをそのまま使用することができる」(ドウシシャ 生活関連事業部 特販営業ディビジョンの向畑智志グループマネージャー)
そして3つ目が、環境にやさしいという点だ。
業界の調べによると、遺体冷却から、照明、火葬場の焼却炉熱源までを含めると、葬儀業界全体で、年間2000万トンのCO2を排出しており、その中で最も多いのがドライアイスだという。「ドライアイスは、CO2を固形化したものであり、大気中に昇華する際にはそのすべてがCO2になる。さらに、昇華する際の体積は400〜600倍にもなる。年間で1300万トンものCO2を排出している計算になる」と向畑氏は説明する。
さらに、ドライアイスで凍らせた遺体は火葬時に炉の低温化を招き、ダイオキンを発生させることも問題視されているという。ダイオキンの排出推計値では、一般および産業廃棄物焼却炉、自動車排気ガスを上回り、火葬場が第1位になっているほどだ。
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