葬儀業界に新風 ドウシシャの遺体冷却安置台は何がすごいのか?:ドライアイス問題を解決(3/4 ページ)
葬儀業界の“常識”が変わろうとしている。現在、遺体冷却の80%以上をドライアイスに頼っていると言われているが、ドウシシャが発売する吸熱式遺体冷却安置台「メモリアルベッド」ではペルチェ素子によって冷却できるのだという。
使用減らないドライアイスに歯止め
日本は、少子高齢化が進展する一方で、年間死亡者数は増加傾向にあるという。国立社会保障・人口問題研究所によると、年間死亡者数は、2006年に110万人だったものが、15年には130万人に拡大。30年には160万人に達すると予測されている。
こうした死亡者数の増加によって、地域によっては、火葬施設の不足による「火葬待ち」の状況が発生している。つまり、ドライアイスの使用量も拡大傾向にあるというわけだ。
中川氏は、「環境省では、約20年前から遺体保存のためのドライアイスの使用、火葬場へのドライアイスの持ち込みを自粛するように要請を続けているが、ドライアイスの使用は減少していない。凍らせてしまえば腐敗せずに済むから安心という考え方が変わらないほか、慣れている方法からの変更を嫌うこと、行政からの要請が強いものではないといった観点からドライアイスを使い続けている側面がある」と指摘しながら、「死亡者数の増加、安置期間の長期化によって、ドライアイスの使用量が増加。コスト増や環境対策といった点でも、ドライアイス以外の仕組みを模索する時期に来ている」と強調する。
もちろん、業界内では、ドライアイス以外にも、いくつかの冷却方法がすでに存在している。
例えば、繰り返し利用が可能な保冷材を使用する方法があるが、ここでは専用の冷凍庫が必要だったり、短時間での交換が必要だったりといった手間がある。エンバーミングや腹水・胸水処理は、長期間保存と自然な姿を実現できるが、高価になるため、遺族の費用負担が大きい。
エコドライクーラーと呼ぶ腹胸部にホームベースのような冷却ボードを乗せる方法もあり、持ち運びのしやすさが評価されているが、冷却のためのホースが必要であり、棺のふたが閉められないといった課題もある。
冷蔵庫や保冷庫に直接保存する方法もあるが、安定した保冷が得られる一方で、初期投資コストが高いという点や、設置場所が限定されること、遺族が面会しにくいといった点がデメリットとなる。
こうしたいくつかの冷却方法の仕組みがある中で、ドウシシャでは、ペルチェ素子を使用したメモリアルベッドで、遺体の新たな冷却、保存方法を提案しようというわけだ。
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