コンビニおにぎり、ひそかに“バイリンガル”になった深いワケ:訪日客にきめ細かい「おもてなし」を(2/2 ページ)
コンビニ各社が訪日客向けにおにぎりのパッケージのデザインを変更している。具材の英語表記やイメージ写真を付けて中身を想像しやすくした。
「自分が海外に行った」と想定して開発
日本人が主に買っているように思えるおにぎりに、訪日客に手に取ってもらえるようコンビニ各社が施した細かな配慮。訪日客が実際にどれだけおにぎりを手に取っているかはPOS(販売時点情報管理)システムでも追跡が難しいが、「訪日客の多い観光地の店舗ほどおむすびは売れているようだ」(ファミリーマート)という。
海外旅行のガイド本「地球の歩き方」を出版しているダイヤモンド・ビッグ(東京都中央区)で訪日客向けメディアを手掛ける弓削貴久さんは「訪日客に人気の高い日本のコンビニでおにぎりのラベルに英語表記を加えたのは大正解」と評価する。
おにぎりは特に米国などで、現地では食欲をそそらない「黒色」をしていることから昔は敬遠される傾向があった。しかし日本食が世界中で浸透しつつある今、おにぎりへの抵抗感は海外でも無くなってきたという。「だからこそ中身を見えやすくすれば訪日客はおにぎりをもっと買うようになるはず」(弓削さん)
実はラベル部分のほかに今回、ファミリーマートが訪日客向けに施した工夫がある。開け方を解説するイラストの記載を手巻おむすびの底面から左肩の面に変更したのだ。他社では底面に載っていることが多いこのイラスト。日本のコンビニ独特のおにぎりの開け方を知らない外国人が、よりひと目で分かるように配慮したという。
同社で手巻おむすびの開発を担当する森安恭平さんは「海外に自分が行ったときに(こうした商品を見て)どう思うかを想像してデザインした」と説明する。韓国を訪れていた知人に現地のおにぎりを買ってきてもらい、パッケージを観察してどう変更を加えれば自分は買うか考えた。
「開け方を果たしてすぐ理解できるのか。どちらの手で持って開けるかまで想像した」(森安さん)。海外でも日本と同様に右利きの人が多いと考え、右手で取った時に見えやすい左肩に説明イラストを載せた。
少子高齢化で国内の胃袋の数が先細る中、小売りや食品メーカーが熱い視線を向けるインバウンド需要。特にコンビニ各社は、ファミリーマートが宿泊施設仲介サイトのAirbnbと提携するなど訪日客の取り込みをめざしている。外国人の視点に立ったきめ細かい「おもてなし」をどれだけできるかが重要になる。
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