沖縄・コザの街のシャッターが少しずつ開き始めている理由:ロックの街に何が?(4/4 ページ)
ロックの聖地として知られるコザ(現在の沖縄市)。基地に隣接する街であることもあって、かつては戦争特需で空前の好景気が訪れた。しかし、その後の衰退によって、中心街はシャッター店舗だらけになってしまった。そうした中、数年前から徐々に街が活気付こうとしているのだ――。
音楽とスポーツで経済効果を生む
スタートアップを今後の新たな街の魅力にしたいと考える沖縄市だが、既に音楽の街やスポーツの街としても積極的にアピールしている。
音楽については先述したように、古くからロックやエイサーが盛んなことに加えて、近年でもダンスボーカルユニット・DA PUMPのリーダーであるISSAや、ロックバンドのORANGE RANGEなど多くのアーティストを輩出している。市の中心部には音楽ホールとスタジオを併設した「コザミュージックタウン音市場」という施設もある。
スポーツに関しては、バスケットボールのプロリーグ「B.LEAGUE(Bリーグ)」の琉球ゴールデンキングスが本拠地を構えるほか、毎年2月に行われるプロ野球春季キャンプでは、広島カープがキャンプ地として利用する。また、市内には「沖縄県総合運動公園」と「沖縄市立総合運動場」(コザ運動公園)という大型スポーツ施設があるため、プロスポーツに限らず、大学陸上部をはじめ県外のアマチュアスポーツチームがキャンプなどを行うそうだ。
この2つのテーマを強化し、新たな経済効果を生み出すべく、1万人規模を収容するアリーナの建設を進めている。県内でこれだけの人数を収容できる屋根付きの施設はほかになく、現状では宜野湾市にある「沖縄コンベンションセンター」が3000〜4000人で最大。これまでは沖縄で大規模イベントをやろうとすると野外で行うしかなかったが、沖縄は台風などの影響を受けやすいため悪天候で中止になることもしばしばあった。例えば、2017年6月に開かれたAKB48選抜総選挙のコンサートイベントが中止になったことを記憶する人も多いだろう(関連記事:AKB48選抜総選挙、沖縄開催の“本当”の理由)。
新アリーナの総工費は約170億円。2020年に完成予定で、経済効果は建設時に約270億円、アリーナ供用後は年間約130億円としている。
単なる“ハコモノ行政”ではなく、ソフト面の充実も図ることで、人々を引き寄せ、定常的に利用される施設にしたい考えだという。例えば、これまで沖縄になかったレストランを併設して、アリーナでイベントがない日でも集客できるようにしたり、VR(バーチャル・リアリティ)などのテクノロジーを活用した新しいスポーツ観戦のスタイルなどを提供したりする計画だ。
コザは県内でもエッジの立った土地として知られる。経済成長に向けた課題はまだまだ多いものの、地域としての熱量と未来を肌で感じることができる。コザのディープさと新しさ――これらをうまくミックスしたアプローチによって街を活性化させ、同じようにもがき苦しんでいる日本の他の地域にも横展開できるモデルがいち早く生まれることを期待したい。
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