沖縄・コザの街のシャッターが少しずつ開き始めている理由:ロックの街に何が?(3/4 ページ)
ロックの聖地として知られるコザ(現在の沖縄市)。基地に隣接する街であることもあって、かつては戦争特需で空前の好景気が訪れた。しかし、その後の衰退によって、中心街はシャッター店舗だらけになってしまった。そうした中、数年前から徐々に街が活気付こうとしているのだ――。
商店街の営業店舗が増えた
スタートアップカフェコザの特徴は、行政との距離が近いことだ。もともと沖縄市は2010年に「沖縄市中心市街地活性化基本計画」を策定するなど、地元の経済活性化に向けて企業誘致などを積極的に行っていた。
しかし、その多くはコールセンターだったため、雇用は生むが、そこで働く人たちの発展的なキャリアパスを生んだり、ビジネスのノウハウが街に残ったりするわけではなかった。加えて、たとえ社屋が街の中心部にあっても、コールセンターの従業員のほとんどは女性で、仕事が終わるとクルマに乗って自宅に帰ってしまうため、街中に人が流れることは少なかった。結局、商店街が変わることはなく、多くの店舗は昼も夜もシャッターを開くことはなかった。
そんな課題に直面していたときに、スタートアップカフェの話が来たのは絶好のタイミングだった。かたや、カフェの運営側も行政の協力をすぐに得られたことは、立地選定や地元商店街とのコミュニケーションなどの面で、非常に大きなメリットがあった。お互いにとって、まさに渡りに船だったのだ。
両者の思いが合致したことで、スタートアップカフェコザの活動は一気に加速する。
いくつかの取り組みの中で、大きな成果を上げているのが、起業や創業の相談、支援である。ここではITビジネスの領域に限らず、飲食店や宿泊施設など自分で事業を始めたい人たちすべてを対象に相談を受ける。事業計画書の書き方や資金調達の方法などをレクチャーするほか、物件も紹介する。
実は沖縄市で開業したいと思っていた人は潜在的に少なくなかったようだが、いきなり個人で銀行や信用金庫に融資の相談に行くのはハードルが高く、諦めていた人が多かったのだ。そうした彼らを支援し始めたところ、「私もやりたい」と手を挙げる人が次々と出てきた。中には沖縄市に移り住んで飲食店を開く人も現れた。
結果、長年にわたってシャッターが下りたままだった店舗に入居する若者などが増えてきた。沖縄市の調査によると、胡屋地区商店街の営業店舗数は、15年に632店舗だったのが、17年には699店舗に増加した。実際に街を歩くと、若い人たちが空き物件をリノベーションして、ギャラリーやカフェ、あるいはゲストハウスなどを運営している様子が目に入った。
これに伴い、商店街の人通りも増加傾向にある。平日の歩行者通行量は15年の6790人から17年に8090人となった。
そのほか、産業育成という観点で期待できそうなのが、スタートアップカフェコザの別館「オキナワミライファクトリー」である。ここでは3Dプリンタやレーザーカッターなどのデジタル技術を使ったモノづくりができる。ここで技術を学んだある女性は東京の大手飲料メーカーから発注を受けて、商品のおまけのフィギュアを製造した実績も出てきている。
これまで沖縄は製造業不毛の地と言われてきたが、こうしたデジタルテクノロジーを使えば、最小限の設備でモノづくりが可能になり、沖縄にいながらリモートワークでメーカーなどと取引もできる。「オキナワミライファクトリーで沖縄の新しい産業の可能性を模索したい」と沖縄市 経済文化部の上里幸俊部長は力を込める。
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