雑誌発行に舞台公演も!? 焼酎業界の「名プロデューサー」走る:すべては焼酎ブーム再来のため(1/4 ページ)
焼酎業界で多くの名酒を生んだ「名プロデューサー」である卸会社の社長が焼酎への逆風の中でブーム復活を狙う。地道な商品開発に加え雑誌発行、舞台の制作まで挑戦。
焼酎の人気が落ち込んでいる。国税庁が発表した2016年度の国内の焼酎消費量は約83万900キロリットルと、ピークだった07年度より17.3%減。帝国データバンク福岡支店の調査でも、17年の焼酎メーカー上位50社の売上高合計は約3216億5300万円と10年前より3.8%減少した。
売れすぎて原酒不足のため一部商品の販売中止が発表された国産ウイスキーとは対照的な消費者の焼酎離れ。10数年前には東京で高級焼酎が1本数万円のプレミアム価格でも飛ぶように売れていたことを考えると、隔世の感がある。
特に打撃を受けているのが、焼酎の本場・九州に古くから根付く小規模な酒蔵。大手メーカーと違い販促に大金をかけられず、小売りや飲食店との交渉力も強くないからだ。
焼酎の持つ「多様性」に衝撃
そんな中、再び焼酎ブームを興そうとユニークな施策を打ち続ける焼酎の「名プロデューサー」が福岡にいる。焼酎の卸・販売を手掛けるルネサンス・プロジェクト(福岡市中央区)の社長、中村鉄哉さんだ。これまでも九州中の埋もれていた焼酎を次々に発掘、ヒット商品に育て上げて不振にあえいでいた零細酒蔵を救ってきた。焼酎PRのためグルメ雑誌の発行、ついには舞台のプロデュースまで手掛けるようになった中村さんの奮闘ぶりを追った。
中村さんの最初のキャリアは商社マン。1984年に三井物産に入社し、99年に九州の支社に転勤したのが焼酎との出会いのきっかけだった。2000年ごろ、焼酎メーカーが出す廃液を処理するプロジェクトに関わることに。
結局、中村さんはこのプロジェクトの実現は難しいと判断し却下した。すると当時の上司が「企画書を書いた人の気持ちを考えてみろ。君も新規事業を立ち上げてみなさい」と言ってきた。そこで中村さんは九州中の酒蔵を巡ることに。行く先々で「(廃液の問題より)焼酎そのものを売れるようにしてほしい」と懇願された。
もともとそれほど飲酒する方ではなかった中村さん。酒蔵で焼酎のことを知るにつれ、「ここまで多様な飲み物なのか」と衝撃を受けた。原料だけでも芋や麦、米以外にもニンジンなど変わり種も多い。製造方法や度数の違い、長期貯蔵した高級品など意外なほどバリエーションに富んでいることに気付いた。
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