「ローソン外国人店員研修」で500人育てた「カリスマママ教官」の愛のムチ:日本のおもてなし術の“伝道師”(2/4 ページ)
ローソンの外国人向け店員研修に記者が参加。指導役の女性が参加者の国の文化に配慮しつつ、厳しく丁寧に複雑なコンビニ業務をレクチャーした。
厳しくても「これが日本のルール」
研修冒頭での自己紹介が終わった後、吉岡さんは事務所に置いてある大きなついたてを指さした。何十人もの笑顔の若者の写真が貼ってある。全員、吉岡さんのもとから巣立った外国人スタッフだという。
「外国人は日本人と比べられます。『ああ、外国人か』って言ってくる人もいる。でも、うちの外国人スタッフはちゃんとしてるねと言ってくれるコンビニオーナーも増えました。この子たちのように、みんなもこれから入ってくる後輩にいい背中を見せられるよう頑張って」(吉岡さん)。
激励の後は椅子に座っての座学や、立ち上がっての接客の練習が始まった。「あいさつはちょっと高めの声で。(2人は)男の子だから低めの声だけれど、頑張って高めでね!」「早口で(客に)聞かれて分からないこともあるよね。そんなときは、もう1度お願いしますって聞きましょう!」。
プライベートでは21歳を筆頭に3人の子どもの母親という吉岡さん。「先生は厳しいです。私はみんなの日本でのお母さんになりたい。お母さんは宿題忘れたら怒るよね? 愛のムチだと思って頑張って」。
研修では店内での基本動作に加え、日本の職場独特の習慣も厳しくレクチャーする。例えば出勤時間の15分前には店に着くこと。駅で迷子になったりするのを想定しての配慮だ。「コンビニではレジに時間通りに立っているのが当たり前。日本人は時間通りでないと怒ります。何て厳しい国に来ちゃったと思うかもしれないけれど、あなた方は日本に来ることを選んじゃった。そしてこれが日本のルールなの。1分でも遅れるなら必ずあらかじめ電話してね」。
ただ、厳しいだけでなく説明が丁寧なのも吉岡流だ。お札を客に渡すときは片手だと失礼なので両手で、というレクチャーを聞いていた安さんが手を上げた。「韓国ではこれ(紙を持つ手にもう片方を添えて)で渡すんですが、日本では違うのですか?」。
吉岡さんは笑顔で「分かるわ。私は韓国の文化って面白くて好き。でも、ここは日本だから合わせてもらえるとうれしいです」。伸びすぎた爪や髭、時計やピアスを禁じるなど外国に比べて厳しめとされる日本の店員のマナーについても「日本人は細かいんです。(日本で)みんなが笑顔になれる接客でないとね」と教え込む。
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