「社員を管理しない、評価しない」 個人と会社の幸せを追求した社長が心に決めたこと:これも新しい働き方(2/5 ページ)
「ワーク・ライフ・バランス」ではなく「ワーク・アズ・ライフ」。こうした言葉を語る人たちが増えている。TAMという会社は、社員のワーク・アズ・ライフを「仕組みで」可能にしている。社長にその本質を聞いた。
自分の給料は自分たちで決めて
――好きなことをやるほうが人は力を発揮しやすいというのは分かります。でも、評価制度がないとなると、どのように成果を測り、給料を決めているんですか?
給与は社員自身が決めます。そのための「WDP」という制度があるんです。
Wは「Work(ワーク)」の略で今期の振り返り、DPは「Development Plan(ディベロップメント・プラン)」の略で来期の計画を意味します。150人のスタッフ全員が毎年、このシートを書いた上で、リーダーと面談します。
ワークについては、会社のクレドにも定めている5つの要素「ハードワーキング」「インテリジェンス」「誠実」「コミュニケーション」「ストレス耐性」に関して、「今期はどんなことができたか」を振り返ります。そして最後に、来期の給与を話し合う。例えば「今期はこれだけの成果を残したのだから、5万円増やして」とか。逆に「週に1日は他社の仕事をしたいので、給与は減らしてもらっていいです」という人もいます。
さっきも言ったように、他人に評価されるために働くなんてしょうもない。その代わり自分で自分を評価して、望む待遇は言ってください、と。これがTAMの成果の振り返りです。
9月の新しい期が始まる前に社員が準備する今期の計画を示すワークシート「PGST」。これに基づいてスタッフはリーダーと計画のすり合わせをし、随時進ちょくをリーダーと確認しながら進める。この手法はすでに約15年間、継続している
こちらが期末の8月に振り返りを行う際に使うワーク。これに基づいて、今期の計画(PGST)、5つのクレドはどれほど達成したかを話し合う。スタッフはこのミーティングで、来期の自分の給与についても希望を申告する
もちろん、各チームの予算は決まっているので、必ず希望通りにいくとは限りません。その要求を受け入れるかどうかの判断は、各チームのリーダーに一任しています。しかし、リーダーとしてもメンバーに不満を持ったまま働いてもらうのではチームとして成果を出せないため、どうにかやりくりをしようとするわけです。場合によっては、リーダーが自分自身の給与を減らして、成果を上げた社員の要求を受け入れることもありますよ。「僕より◯◯さんのほうが貢献しているから、僕の分を◯◯さんにあげたい」って。
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