ZOZO・前澤社長が月へ 宇宙旅行の投資対効果は?:“いま”が分かるビジネス塾(3/4 ページ)
ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」運営企業の前澤友作社長が月旅行計画を明らかにした。費用は公表されていないものの、数人で数百億円となる見込みだ。こうした宇宙旅行の投資対効果はどの程度と考えればよいのだろうか?
ソフトウェアの技術がロケットを変えた
さらに驚くべきことに、ファルコンヘビーの第一段ロケットは自力で地上に戻り、再利用できる仕組みになっている。第一段ロケットの切り離し後、地上に向けて落下を開始し、地上付近でエンジンの再点火(逆噴射)によって、垂直に自立する形で着陸する映像はまるでSF映画の光景だった。
ファルコンヘビーは多数の小型ロケットを束にした構造になっているが、各エンジンの微妙な出力制御がカギとなる。ロケット・エンジンでこうした制御が実現可能となった背景には、エンジンそのものの機械的なイノベーションがあったことはもちろんだが、ソフトウェア技術の発達を抜きには語れない。前澤氏の月旅行に使用される、ビッグ・ファルコン・ロケット(BFR)にも関連技術がふんだんに活用されることになるだろう。
マスク氏と前澤氏は、費用について言及しなかったが、数人の搭乗で数百億円と言われている。乱暴に言ってしまうと、1人100億円で月に行くことが可能となったわけである。
現在、大型の人工衛星を周回軌道に投入するためには100億円以上の費用が必要だが、宇宙ベンチャーの活動が拡大すれば、そのコストを10分の1以下にすることは十分に可能である。今回、月の周回軌道に1人100億円で行けることが明らかになったので、確実にコストのケタは小さくなっている。
では前澤氏にとって、数百億円の資金を投じて月に行くことは合理的な判断なのだろうか。
今回の月旅行について、前澤氏の夢を実現するためだけのプランと考えた場合、投資対効果について議論してもあまり意味はない。夢がプライスレスなのは議論の余地がないからだ。
だが前澤氏ほどの起業家が、投資対効果を考えずにお金を支出するとは考えにくい。前澤氏がアートに対して惜しみなくお金を投じているのも、欧米社会においてアートにお金を出す実業家がどう見られるのか、周到に計算した結果である可能性が高い。
関連記事
- 働き方改革関連法の成立で仕事はどう変わるか?
働き方改革関連法が可決・成立した。国会審議では「高度プロフェッショナル制度(高プロ制度)」の是非が主な争点となったが、同法案がカバーする範囲はもっと広い。法案の概要と施行後にどのような影響が及ぶのかについて考察する。 - 転職が増えないと、社会のAI化は進まない?
AI化が進むと人間の仕事の多くが失われるという話は社会の共通認識となりつつある。しかし、現在の労働市場のままでは、AI化そのものがスムーズに進まない可能性もあるのだ。 - ジムに通うと安くなる保険から考える、健康維持の秘訣とは
スポーツジムに通うなど、健康増進活動をすると保険料が安くなるという新しい保険商品が注目されている。運動好きな人を中心にどれだけ保険料が安くなるのかに関心が集まっているようだが、この商品の注目点はそれだけではないのだ。 - なぜメルカリはホワイトな労働環境をつくれるのか?
メルカリの福利厚生がホワイトすぎると話題だ。多くの日本企業は働き方改革を実践するため、残業時間の規制などに躍起になるが、根本的な誤解も多い。メルカリの取り組みを知ることで働き方改革の本質が見えてくるはずだ。 - 銀行マンが転職できるか真面目に考えてみた
メガバンクの大規模な人員削減計画が大きな話題となっている。そこで注目されるのが銀行マンの去就だが、彼らが他業種に問題なく転職できるのか考察してみた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.