南極に挑む冒険家・阿部雅龍さん 命がけで「独りの自由」を貫く訳:支援者集めもセルフプロデュース(3/3 ページ)
冒険家・阿部雅龍さんが11月、南極の単独踏破に挑む。時には営業マン張りのPR力やスピーチで約1250万円の費用集めに奔走。資金集めも冒険もあくまで行い1人で自由と責任を抱える。
冒険とは「自分の命を自分で判断できる場」
単独の冒険にこだわる理由について阿部さんは「はじめは師である冒険家・大場満郎さんのスタイルに憧れたから。でも今は、単独が一番自由だからだ」と語る。
阿部さんにとって冒険とは「自分の命を自分で判断できる場」。リスクを背負いながら自分の命を自由にできることこそ、究極の自由だと考える。「昔は電気が止まることも珍しくなかったが、今は半日止まるだけでも大騒ぎになる。(停電下でも)生存できる能力があれば問題ないのに。僕の感覚がずれているだけかもしれないが、現代社会は『自由』を失っている」。
北極遠征の最中では食料の多くを落とし、引き返すか冒険を続行するかの判断を迫られたこともある。自分の体内の脂肪量を推測し、残った食料と合わせ計算することで残りの道のりを踏破できるか計算。体力がギリギリ持つと判断して前進し何とか生還した。ただし2キロと計算していた体重の減少量は7〜8キロにまで及んだ。
冒険で生死を分ける場面に冷静に対処することもまた「自由」と考える阿部さん。「冒険で何があっても責任は自分にある。決断を自分で下さない冒険家になってはいけない。冒険も、もしかしたら人生も同じなのでしょうが、主体性を無くしてはいけない」。
実は今回の南極遠征は阿部さんの最終目標ではない。夢は同郷で日本人初の南極探検家、白瀬矗さんの果たせなかった前人未到の「白瀬ルート」を踏破することだ。今回の遠征が成功したら19年にも挑戦したいという。究極の自由を追い求め、阿部さんの冒険は続く。
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