離職率28%だったサイボウズは、どうやってブラック企業から生まれ変わったのか:幸せと生産性を考える(3/3 ページ)
今から13年前、当時ベンチャーだったサイボウズは20人以上の社員が退社し、離職率が28%となりました。どんどん社員は辞めていくが、業務は山のようにあり、休日出勤も常態化しているといった、いわゆるブラックな労働環境だったという。そこからどうやってホワイト企業に生まれ変わったのだろうか。
もやもやに、いちいち対処する≒多様性を実感し、選択肢を増やす
この質問責任と説明責任を愚直に実践すると、1つ1つのもやもやに対処していくことが求められます。「えー、そんなの面倒だよ」と思われた方もいるかもしれません。その通り、大変です(笑)。
しかし、仕事の優先順位を決める裁量が各自にあること、そうした1つ1つの質問に誠実に対応することを優先して良いとされているため、思ったより負担ではありません。大半の質問は仕事に関係あるものがほとんどですので、結果として業務改善などにつながります。
一人一人の意見に対応していると、1つの制度だけでは対応しきれず、例外を作ることになります。例外だらけの制度はもはや機能しなくなるので、サイボウズでは、いくつかの選択肢を設け、本人に選んでもらう方法をとったり、一人一人のニーズに応じてルールや制度を作ったりしています。
例えば、出退勤時間は一人一人違います。体調や家族の状況、天候などに合わせて会社に出社するか在宅勤務とするかも、日々個人に任されています。
このように一人一人のニーズに応えていくのは、手間がかかり、ともすれば生産性が悪くなるのではないかと思えます。しかし、やってみた結果、離職率が下がり、社員の満足度が上がり、売り上げも増えました。生産性の向上にも寄与したと言えるでしょう。
目の前の働く人のもやもやに対応していった結果であるので、「これをすれば売り上げが上がる」とか、「満足度が上がる」とは言えません。しかしサイボウズが、ホワイト企業だと言われるようになった背景には、こうした愚直なコミュニケーションの蓄積があります。逆に言えば、それのみです。本当は何か魔法があったかのようなことを言いたいのですが、残念ながらそのようなものはこの15年弱、なかったような気がします。
私たちが、「生産性より働く人の幸せを」と思うようになったのは、こうした自分たちのやってきたことを振り返ってきた結果です。
今回は、サイボウズの事例を話しましたが、果たしてこれは特殊な例なのでしょうか? 実はそうではありません。次回は他の企業の例についても紹介します。
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