「バカマツタケ」、バカにできない本物並みの味 人工栽培に成功:香りならマツタケ超え!?(1/3 ページ)
多木化学がマツタケの近縁のキノコ「バカマツタケ」の完全人工栽培に成功したと発表。味や香りは本物と同格かそれ以上。生きた木と共生して育成するメカニズムを解明した。
肥料や化学品のメーカー、多木化学は10月、マツタケの近縁種のキノコ「バカマツタケ」の完全な人工栽培に成功したと発表した。と言っても、このキノコを今まで聞いたり食べた記憶のある人はあまりいなかったのでは。これまでは天然物はスーパーなどの店頭ではほとんど流通しておらず、産地でもマツタケと混同されているケースもあったという。
このバカマツタケ、マツタケの単なる「偽物」ではなく味や香りは本物と同等かそれ以上とされる。マツタケはいまだに人工栽培の技術が確立しておらず高級食材であり続けてきた。こちらのバカマツタケが人工的に量産できれば、ほぼ同じ味わいを季節と関係なく身近に楽しめるようになる。
人工栽培の技術開発に携わった同社研究所の主任研究員、秋津教雄さんによるとバカマツタケは地域によっては「早松(さまつ)」と呼ばれる。マツタケより1カ月程早い8月下旬〜9月下旬に生えてくるため、「寝ぼけて早く出てきたバカなマツタケ」という意味で呼ばれているとか。
ちなみにマツタケの近縁種には「ニセマツタケ」「マツタケモドキ」も存在する。ただ秋津さんによるとこの2種は肝心の香りがほとんどしないなど風味で劣る。食べておいしいのはあくまで本家と「バカ」の方なのだという。
バカマツタケはマツタケより特に香りが強めとされる。大きさは本家より少し小ぶりな傾向だが見た目はほぼ一緒。秋津さんによると天然物は道の駅など産地の店か、ネット通販くらいでしか出回っておらず、認知度も流通量も低いとみられる。
「生きた木と共生する生態」が人工栽培の壁に
バカマツタケにはもう1つ、マツタケとの大きな違いがある。マツタケが針葉樹林のアカマツなどの根元に生えるのに対し、バカマツタケは広葉樹林であるブナ科の木の方に生える。両方とも生きている植物と共生する「菌根菌」というキノコに分類される。秋津さんによると、生きている植物から栄養をもらうという“マツタケ一族”の生態こそが、完全な人工栽培の実現を難しくしている理由だという。
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